<レッズ2-8ドジャース>◇17日(日本時間18日)◇グレートアメリカンボールパーク
【シンシナティ(米オハイオ州)17日(日本時間18日)=斎藤庸裕】ドジャースが5年連続で地区制覇を達成した。右上腕二頭筋の炎症で負傷者リスト(IL)入りしている大谷翔平投手(32)は不在。豊富な資金でスター選手らがそろう一方で、主力が故障しても次々と他選手がカバーする底力がある。大谷の移籍から3年間、常勝ド軍を密着取材してきた斎藤庸裕記者が、なぜ、チームにぴったりとはまる選手を発掘できるのか、その謎に迫った。
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復帰間近とされていた8月28日、大谷がブルペン投球を終えた直後に偶然、敵地のクラブハウスで居合わせた。ピリピリした雰囲気はなく、あいさつの言葉は「ざっす~」と軽妙だった。びっしょり汗をかき、すっきりしたような表情に見えた。状態が良かったのかと察するのが自然だが、逆だった。先発登板は見送られ、最終的に投手復帰を断念する結果となった。
今季序盤、負担を考慮され、投手専念の起用が続いた。大谷はポーカーフェースを崩さなかった。久々に投打で出場した6月中旬、二刀流が自分らしさを発揮できる場所なのか、あえて問いかけた。「(投打で)やってほしいって言われる、このスタイルが一番自分にとってベストなのかなと」。うれしそうに話していたわけではなかったが、胸に秘める思いだと伝わった。
その時々の表情を観察するだけでは、人間的な心情を読み取ることが難しい。ただ、一貫した行動や姿勢から推察できることはある。今季、投打で同時出場した際に、平凡なゴロでは全力疾走しなくなった。大谷は「次の回に集中した方が勝てる確率は高くなる。全部は、勝てる確率を高くするための戦略」と言った。求めていたのは、常に“可能性を高める”作業だった。左ひざや右上腕の状態悪化を考慮し、自分でストップをかけることはないのか、との問いにも自らリミットをかける言葉は出さない。決して、可能性を下げることはしなかった。
それなのに、どうしても理解できない“謎”があった。違和感が残りながら打者出場を続け、登板可能となるまで回復を待つ-。可能性を高めるのとは逆で、矛盾とも思える判断をなぜ下したのか。そのプロセスを突くと、大谷は言った。「少しのリスクを取りながら、それよりも(打者で)貢献する可能性の方が高い」。通常の投手ではあり得ない選択だ。そもそも打者でもある大谷は“通常”はあてはまらないが、リスクを取り、たとえ可能性が低くなっても挑戦しようとする姿勢は、むしろ二刀流へのこだわりを感じさせた。
米メディアからは今季、シーズンを通した二刀流に懐疑的な目を向けられていた。メジャー9年目で32歳。身体的な負担や打者でのパフォーマンス低下を踏まえれば“現実的”な見方だった。大谷は、そこにあらがっているようだった。だが結果的には現実を突きつけられた形となった。「残念でもありますし、そこも含めて今年1年間の反省点なのかなと」。冷静に受け止め、その上で前を向いた。
打撃面でも、本調子とはほど遠い状態が続いた。それでも「(打者として)引き出しの多さを作るチャンス」と捉えた。逆境から、次なる光を見いだす。無理と思われても、やってみないと分からない。9月初旬、4試合欠場し、1試合復帰してから状態が上がらずにIL入り。この判断に賛否はあるにせよ、挑戦を続ける大谷ならではの行動だったように感じる。トライし、失敗しては立ち上がる不屈の二刀流。可能性を信じて突き進んだ姿に、人間らしい、意地が見えた。