スピードスターの価値ある“トライ”が、4連覇への望みをつないだ。巨人片岡治大内野手(32)が1点リードの5回1死一、三塁、試合を決定付ける9号3ランを放った。12年オフに、ラグビーのトップリーグに所属するサントリーの練習に参加。SH日和佐ら南アフリカを破ったW杯日本代表メンバーと汗を流した。大舞台で輝きを放った仲間の姿を刺激に、4試合ぶりのスタメン起用に応えた。

 培った自慢のスピードを、生かす必要はなかった。1点リードの5回1死一、三塁、巨人片岡は左翼席に飛び込む“3点トライ”を鮮やかに決め、ゆっくりとダイヤモンドを回った。「いつも結果が出ていなかったんで、良かったです」。大黒柱の阿部が欠場する中、4試合ぶりのスタメン起用に応えた。

 強烈な自己欲が結果に直結した。「(スタメンを外れた)悔しさもあったし、今日は自分で決めてやろう、という強い気持ちでいった」。マイナス思考や邪念を捨てて、純な思いを一振りに込めた。打ったのは初球の内角直球。「長野の時もインコースを攻めていたので、狙いを絞って、思い切って」。勝負勘も見事にさえ渡った。

 偉業を達成した仲間の姿に、刺激を受けた。20日の中日戦前、ナゴヤドームへの道中、バスのテレビに映し出されたラグビー日本代表のニュースに目を奪われた。「あっ、日和佐(篤)くん(28)だ。すげぇなぁ~」。思い起こしたのは、12年オフに参加したサントリーの練習。「足の上げ方・走る時の姿勢・足裏の接地時間」の3つを伝授され、新たな走法が完成した。

 片岡 興奮して、鳥肌が立った。あの時、一緒にやらせてもらった方が活躍していて、本当にすごいなと。奇跡とか言うけど、やればできるんだと。僕も強い気持ちを持ってやる。

 ここぞの集中力と攻め抜く決断が、日本の劇的な勝利を決めた。元来、日本シリーズなどの短期決戦や大舞台に強く、晩秋に力を発揮する球界屈指の「秋男」。ともに汗を流したラガーマンの勇姿に勇気づけられ、持ち前の攻める姿勢が復活した。原監督は「そうそうないチャンスでよく打ってくれた」と評価。連敗を2で止め、ゲーム差なしの2位阪神と直接対決2連戦を迎える。【久保賢吾】

 ◆日和佐篤(ひわさ・あつし)1987年(昭62)5月22日、兵庫県生まれ。報徳学園-法大。10年にサントリー入り。11年4月30日の香港戦で代表初キャップ。同年のアジア5カ国対抗で新人王。通算48キャップ。ポジションはSH。166センチ、72キロ。