JR東日本東北(宮城)がきらやか銀行(山形)を5-1で破り、3年連続19度目の日本選手権(11月1日開幕、京セラドーム大阪)出場を決めた。3連投となった新人右腕の加藤弦(22=富士大)が先発。9回6安打6奪三振1失点で完投し、最優秀選手賞を獲得した。今年6月に都市対抗出場を逃した悔しさを胸に、加藤は徹底した走り込みで調整。昨年の本大会で完全試合を達成した左のエース西村祐太(29=桐蔭横浜大)と2枚看板を形成するまでに成長した。

体が勝手に跳びはねた。加藤は最後の打者を捕飛に打ち取った瞬間、大ジャンプ。その後、相棒の薗部優也捕手(26=東日本国際大)と再びジャンプして抱き合い、喜びを分かち合った。最後はマウンド付近でもみくちゃにされ、整列に加わった。「ストレートが走ってなかったけど、粘れた。走り込みで制球しやすくなったし、体のバランスが良くなった。優勝できてうれしい」。3連投の疲れを見せずに116球で1失点完投。大卒ルーキーが右の大黒柱に成長した。

6月の都市対抗東北2次予選は敗者復活戦で七十七銀行(宮城)に7-17で敗れ、チームは3年連続で本大会切符を逃した。就任1年目の西村亮監督(44)は勝負どころで粘れない投手陣に、徹底した走り込みを命じた。「限界を超えようと。心の問題。死ぬほど走らせました」。6月中はボールを握らせず、ひたすら走り込ませた中で台頭してきたのが加藤だった。

涙を糧にした。加藤は苦手な長距離走を1日約20キロもこなす中で、鈴木良二コーチ(39)からゲキを飛ばされ悔し涙を流していた。「何も考えずに走っていたら、良二さんに1週間ぐらい怒られ続けた」。それ以降、パート別練習から抜け出して1人でも練習を黙々とこなすようになった。「人生一きつかった。思い出すだけでも嫌」。ゲキを飛ばした鈴木コーチは「大黒柱になってほしかった。それ以降は目の色を変えてやってくれた。今日はよくやった。でも、もっとできる」とさらに期待をかけた。

昨年は初戦でエース左腕の西村が完全試合を達成したが、2年連続の2回戦敗退に終わった。「今日みたいに粘って、(1回を)3人で終わりたい。負けたくない」。神戸市出身の加藤は高校で八重山商工(沖縄)に野球留学し、大学は富士大(岩手)へ。流浪の右腕が、地元の関西で暴れてみせる。【高橋洋平】