25日に運命のドラフト会議が行われる。悲喜こもごも…数々のドラマを生んできた同会議だが、過去の名場面を「ドラフト回顧録」と題し、当時のドラフト翌日付の紙面から振り返る。

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<04年11月18日付、日刊スポーツ紙面掲載>

ダルビッシュが、新庄に弟子入り!? プロ野球ドラフト会議が17日都内で行われ、日本ハムは超高校級右腕のダルビッシュ有投手(18=東北)を、1巡目で単独指名した。指名直後に行われた記者会見で、ダルビッシュは入団について即答を避けたものの、新庄の話題が出ると、ポーカーフェースが一転し表情を緩めた。今季、新庄が球場を沸かせた「ゴレンジャー」などの試合前のかぶり物に「もし、そういうのがあればやってみたい」と興味を示した。

落ち着いていた。甲子園で見せたマウンド度胸さながらに、ダルビッシュは100人近い報道陣を前にした会見でも淡々と質問に答えた。日本ハムに対して「やっぱり、指名されたことは光栄です」。入団については「今から考えます」と言葉を選んだ。しかし、新庄の名前が出ると18歳の少年の顔をのぞかせた。

「何をしても絵になる選手」と新庄の印象を話した。日本ハムについても「新庄さんが行って盛り上がっている球団。僕の調子が悪いときもずっと見てくれていた。そういう部分では『いいなぁ』と思っています」と好印象を口にした。

今季、試合前の練習で新庄ら5選手が披露した「ゴレンジャーのかぶり物」にも「ニュースで見ました。もしそういうのがあればやってみたい」と笑顔で応えた。入団の即答は避けたが「新庄劇団」への参加には前向きだ。取りざたされているメジャー指向にも明言。「興味がない。目標は日本のプロ野球」とはっきりした姿勢を打ち出した。

野球を始めた時から目標はプロだった。中学卒業後、大阪から仙台に留学した。入学時に当時監督だった若生正広現野球部顧問から1枚の紙をもらった。「ダルビッシュ有・大投手への道」と題された紙には心・技・体の3つの項目に分かれて心得が書かれていた。「人間の好き嫌いをなくすこと」「常に平常心を保つこと」など10カ条。

3年間、自室に貼り、お守りのように大切にしてきた。今年の国体が終了し、ダルビッシュは若生顧問に頭を下げた。「ありがとうございました」との言葉と一緒に、「お守り」を返した。若生顧問は「3年間で本当に大人になった」と話した。

この日、日本ハム側も最大限の誠意を示した。今成泰章スカウトは、指名した3分後には学校を訪問し、指名のあいさつをした。「史上最短の指名あいさつ」に加え、米国に帰国中のヒルマン監督からの熱い「ラブレター」も持参。球団側の誠意に、ダルビッシュからも笑顔がこぼれた。

今日18日にも高田繁GMが指名あいさつに訪れる。「うまくいけば、1年目の途中からでも1軍で投げてもらえるんじゃないか」と高田GM。球団関係者によると、昨年の2巡目で指名した須永英輝投手と同様に高卒ルーキーとしては最高の契約金1億円を用意する見込み。あとはダルビッシュの決断を待つ。

 

※記録と表記などは当時のもの