だから藤浪は終わらない! 阪神藤浪晋太郎投手(24)が2日、高知・安芸での秋季キャンプでブルペン入り。完全復活を目指す来季へスタートを切った。ここ3年は低迷が続くが、巨人を自由契約になった上原浩治投手(43)、同い年の広島鈴木誠也外野手(24)、オリックスT-岡田外野手(30)がポテンシャルの高さを証言。WBCで侍ジャパンの投手コーチを務めた権藤博氏(79=野球評論家)も「超一流」に復活ロードを提言した。
安芸のブルペンで明るい声が上がる。「最後、ちょっと力いれて行きます」。声の主は藤浪だ。ゆったり足を上げ、締めの35球目を投じた。「自分のフォーム、リズム、タイミングの再確認というか。バランスは悪くなかった」。誰もいなくなったブルペンで、完全復活へ第1歩を踏み出した。入団3年で35勝21敗の成績を残したが、ここ3年間は15勝19敗。それでも、将来の球界を背負っていく高いポテンシャルがあると気にかけている人物は多い。
上原も藤浪晋太郎に魅了された1人だ。世界一のクローザーが言葉を紡ぐ。「本当に期待しているんです。あれだけの長い手足を持った投手がどう成長していくのか。もっとすごくなるよ」。藤浪と直接の絡みはなく、今季は敵だった。海外では数々の剛腕を見てきた。そんな上原が「もっとすごくなる」とまで言う。
相対する打者の頭には、強烈な残像がある。広島鈴木はシーズン中に「あの体は反則でしょ。外国人枠ですよ! 怖いですよ」と冗談交じりに笑っていた。オリックスの主砲、T-岡田も「僕が偉そうなことを言える立場ではないけど」とした上で言った。「テレビで見ててもエグい球を投げてる。制球とか言われてますけど、投手としての怖さがある。逆にまとまってしまったら…」。大阪桐蔭で春夏全国制覇し、ドラフトでは4球団が競合した本格派のスター投手。たとえどん底の時でも、同じプロ野球選手が話題にするほど、特別な存在のようだ。
世界の舞台に招集した男も力説する。第4回WBCで投手コーチを務めた権藤氏は「角度、キレ、そしてあの暴れ方は相手打者には脅威なんだ。誰が見ても素材は超一流。だから侍ジャパンにも呼んだんだ」と言う。現状への提言も含め「こぢんまりとまとめさせてもしょうがない。完全復活するために確実なステップを踏むこと。大前提でローテで投げさせる。イニングは少しずつ伸ばせばいい。完全に戻ったら、元の姿に戻るだろう」と指摘した。
藤浪は完全復活へ、権藤氏の言う段階を踏んでいる。体を大きく使い、感覚を重視して腕を振り「今日は最初の駆け出しというか再確認。これから徐々に上げていきたい」と見据えた。背後からは制球難から復活へ導いた福原投手コーチも見つめていた。低迷してもなお、球界のレジェンド、選手に期待させる男。今季は3連勝フィニッシュできっかけもつかんだ。誰よりも自身の完全復活を信じ、安芸で汗を流す。【池本泰尚】
◆今季の藤浪 開幕2戦目3月31日巨人戦に先発を任され、ローテの柱と期待された。ところが2度の2軍落ちを経験し、初勝利は6月15日楽天戦。そこから1、2軍を往復したが、9月16日DeNA戦では自ら満塁本塁打を放って復活の勝利を挙げ、同29日中日戦では完封勝利。9月以降4戦3勝で18年を終了。無駄な力を省いたフォームから安定した投球を続け、来季への可能性を感じさせた。