2015年(平27)に球界初の女性オーナーに就任したDeNA南場智子氏(56)。以降、セ・リーグの団結は非常に強くなったといわれる。しなやかで、でも心(しん)の強さを感じさせる立ち居振る舞いが共感され、球界で確かな存在感を放っている。飾らない言葉たちの中に、経営者の鋭い視点と豊かな人間味が同居している。


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ファンのような心忘れず

<取材後記>

南場オーナーに話をうかがったのは、ちょうどCS争い佳境のときだった。しかも3位を争う巨人との直接対決前。場所はディー・エヌ・エー本社が入る渋谷のヒカリエだった。オーナーも東京ドームで試合を視察予定。大一番のゲームを前に時間をつくってもらい、7年前の買収劇を中心に、振り返っていただいた。

ときおり話はシーズンを戦うチームに“脱線”しながら、勝つ喜びの一方で勝てないやるせなさが、行間からにじみ出る。すべては野球愛とチーム愛があるから、自然とこみ上げる本音なのだろう。言葉を選びながらていねいに話すときもあれば、あっけらかんと笑顔で話す南場オーナーは、人間味を漂わせるから、遠い存在のようで親近感を勝手に抱いてしまう。

取材終盤、進行中のゲームに心なしかそわそわしながら時計を確認。東と菅野の投げ合いという展開を聞き「だんなに祈っています。どうか勝たせてくれって。特に今日」。手を合わせ願うように東京ドームへ直行。いちファンのような心を忘れずに、プロ野球界と向き合っている。【栗田成芳】

11月、オーナー会議に出席するDeNA南場智子オーナー
11月、オーナー会議に出席するDeNA南場智子オーナー

◆南場智子(なんば・ともこ)1962年(昭37)4月21日、新潟市生まれ。新潟高から津田塾大を経て86年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。88年から米ハーバード大経営大学院に留学。96年マッキンゼー・アンド・カンパニーの役員就任。99年に同社を退社しDeNAを設立。11年11月、DeNAがプロ野球横浜ベイスターズの筆頭株主となり、横浜DeNAベイスターズが誕生。12年から新規参入。15年1月に同球団オーナー就任。