日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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プロ野球オーナー会議が7月にも開催される。12球団トップが一堂に会する会合だが、ほとんど足並みがそろわない。特に、パ・リーグは軒並み空席が目立っている。

少しプロ野球の「オーナー」について触れたい。その言葉を持ち込んだのは映画業界、大映社長の永田雅一氏だったようだ。1950年代のことでプロ球界にも進出する。

プロ野球の発展は読売新聞社社長だった正力松太郎氏によるところが大きい。戦前戦後の業界を支えながら盟主巨人の礎を築く。テレビジョン経営、その普及とともに野球を国民的娯楽に導いた。

球団の変遷は、日本経済史を表している。かつては映画、新聞、電鉄会社が球団を経営したが、そのうち小売業、リース、IT業界が進出。昨年はアパレルのZOZOが興味を示した。

その時代の名物オーナーを多数取材してきた。関西では近鉄佐伯勇氏、上山善紀氏、阪急小林公平氏、南海川勝伝氏…。阪神久万俊二郎氏も個性派の1人といえた。

巨人渡辺恒雄氏(読売新聞グループ本社代表取締役主筆)から「一心同体」といわれた存在の久万氏は「うちが球団をたたむときはプロ野球が滅びるとき」と熱っぽく語っていた。

流通革命の旗手、ダイエー中内功氏と一緒にクルージングにでた玄界灘で「あそこに世界一のドーム球場を建設するから」と言われたときは鳥肌が立った。

オリックス宮内義彦氏もCI(コーポレート・アイデンティティー)戦略で球団経営に乗りだし、今では長老格オーナーで改革派として知られる。

昭和から平成にかけてはオーナーの在り方も変わってきた。親会社の会長、社長というだけでオーナー職に就くサラリーマン・オーナーも目立ったが、その発言は影響力が大きい。

プロ野球は国民文化の一端を担う、確固たる社会的使命を課せられている。セ・パ両リーグがそろわない構図は「ファンあってのプロ野球」の理念が抜け落ちているからだろう。

東京オリンピック(五輪)をもって野球・ソフトボールは再び除外される。プロ・アマがどれだけ継続に力を入れ、国際的に縮小をたどる現実を、どのように受け止めているのだろうか。

野球界はエンターテインメントとしての生き残りがかかる。一方、ただもうかればいい的発想はファンに見透かされる。いかに「文化的公共財」と「ビジネス化」のバランスをとるか。

各球団オーナーには野球界の将来ビジョンを語ってほしい。次回オーナー会議は楽天三木谷浩史氏が議長役。令和時代初となるトップ会議は、まさに波乱含みといえる。【寺尾博和】