「島岡(吉郎)監督に似てたか?」。明大・善波達也監督(56)が優勝会見で喜多真吾一塁手(4年=広陵)にこう声をかけた。9回2死後、3点二塁打を放った同選手が「監督が絶対に打て、という怖い顔をしていたんで」と話した直後に、こう突っ込んだ。

故島岡吉郎監督の教え子を自他ともに認める。就任12年目、ついに日本一をつかんだ。「4年生が活躍するのはいい姿ですねえ」。就活中に練習を手伝った控え組をたたえることも忘れない。この日も合宿所隣に立つ島岡監督の胸像の前で校歌を歌い出陣、その前に4年生はトイレ掃除を終えていた。「4年といっても社会人になれば一番下。野球は鍛えて速い球を投げればいいんじゃなくて、いろんな要素が左右する。生活もしっかりしないと」。

今年、30年ぶりに猪(いのしし)ワッペンを復活させた。38年前のユニホームにもあった。善波監督は当時1年生。その年の夏、シートノック中に悪送球して合宿所を出された。復帰は翌年1月。厳しさをたたき込まれ、それを引き継ぐ。「パワハラはいけないが、厳しくなりすぎないように厳しく。言わなきゃいけないことは伝えないと」。

そんな善波監督の趣味はミュージカル観賞。今月末には、劇団四季の「アラジン」が予定に入る。「勝って、見られてよかった」。このときばかりは、島岡監督とは別人の顔で笑った。【米谷輝昭】