広島九里亜蓮投手(27)が執念のプロ初完封で、チームの連敗を3で止めた。「日本生命セ・パ交流戦」の楽天戦で、テンポよく持ち球を散らし、球数わずか107球で3安打無四球。最下位が確定していた交流戦の最終戦で全6カード負け越しの屈辱を回避した。セ・リーグ首位巨人とは1ゲーム差の2位。28日から再開されるリーグ戦でも、気迫を前面に出した投球でチームを引っ張っていく。

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ヒーローインタビューで九里が衝撃の事実を明かした。「初完封ボールを(西川)龍馬がスタンドに投げ入れてしまったので、もう1度完封して次はもらえるようにしっかりがんばりたい」。敵地楽天生命パークから笑いが漏れる中、湧き出る喜びに身を任せた。6年目の初完封。文句なしの107球だった。

最速148キロの直球、ナックルカーブ、シュート、スライダー、カットボール、チェンジアップ、フォーク。持ち球をコーナーに散らし、テンポよく逃げずに勝負した。8回2死一塁では山下の小飛球を追い、ファウルゾーンでダイビングキャッチ。「まさかああいうプレーになるとは思っていなかった」。執念と集中力を切らさなかった。

交流戦直前に中継ぎから先発に復帰し、乗れないチームを鼓舞してきた。3試合で2勝0敗、防御率は交流戦3位の1・42。勝てなかったロッテ戦も5回を1失点に抑え、勝利投手の権利を持って降板している。チーム5勝のうち2勝をマーク。交流戦男と言っていい奮闘を、最高の形で締めくくった。

タフネスには理由がある。米国テキサス、フロリダで生活した少年時代。野球に加え、バスケットボール、アメリカン・フットボール、アイスホッケーにも熱中した。多種目に取り組んだことで、強い心と体を手にできたと実感している。先発、中継ぎの調整の違いに悩むより、目の前の打者を抑えればいいと考える。

刺激になるニュースもあった。今月21日、ゴンザガ大のバスケットボール選手、八村塁(21)がNBAドラフト1巡目、全体9位でワシントン・ウィザーズに指名されたことを知った。「NBAは世界のドラフトですからね。世界の10人に入っているようなもん。応援したいですね」。狭き門であることを理解しているだけに、心が躍った。負けられないと思った。

緒方監督は「今日は九里に尽きるね。本当にナイスピッチングだった。気持ちの上でも、しっかりボールをコントロールしていた」と絶賛した。28日から巨人と1ゲーム差の2位に詰めたリーグ戦が、再開する。大きな壁を越えた九里もまた、厳しい戦いに身を投じる。【村野森】

広島会沢(九里について)「ナイス完封。いろんな球種を使って投げきってくれた。九里に感謝です」

広島佐々岡投手コーチ(九里について)「1回1回がしっかりした内容だった。9回も当然(続投)。完封して自信になったと思う」