追い込まれた広島が執念を見せつけた。9回に3点差をひっくり返し、今季10度目のサヨナラ勝ちを決めた。鈴木誠也外野手(24)が起死回生の同点24号3ランを放ち、最後は途中出場の三好匠内野手(26)がサヨナラ打を放った。デビュー戦となった「もう1人のドミニカン」フアン・サンタナ内野手(25)も4回に同点打を放つなど躍動した。首位巨人とは変わらず6・5差。最後の最後まで諦めずに戦い抜く。

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絶対にあきらめない。何度も修羅場をくぐってきた鈴木が、土壇場で集中力を研ぎ澄ませた。3点を追う9回無死一、二塁。ヤクルト・ハフの3ボールからの4球目を、迷わず狙った。弾丸ライナーの24号同点3ラン。これで打線が勢いづき、最後は三好が中前にサヨナラ打を放った。マツダスタジアムが最後の最後で一気に沸き上がった。

緒方監督も劣勢をはね返した粘りに驚くしかない。「キク(菊池涼)がつなぎ、誠也が勇気をもって3ボールからしっかりと、打つべきボールを捉えた。その流れで最後は…。三好もたいしたもの」と、賛辞の言葉を並べた。

必勝態勢だった。得点源だったバティスタがドーピング陽性反応により17日に離脱。得点力がダウンした。首脳陣はもう1人のドミニカ人野手サンタナを初めて出場選手登録し、7番一塁で先発させた。田中広をベンチから外してまで、送り出していた。そのサンタナが、2-3の4回無死一、二塁で同点打を放つ。「チャンスだったので高めにきたボールを積極的に打ちにいきました」。これで勝ち越しを呼び込み、勝ちパターンに持ち込んでいた。

サンタナはドミニカ共和国のカープアカデミー出身で、春季キャンプ中に育成となり、7月29日に支配下登録された。内野の万能選手で、2軍での成績は出場83試合で打率2割7分2厘、5本塁打、31打点。自らの打撃について「ホームラン打者じゃない。ライナーで左中間、右中間に安打を打ちたい」と話していた。バティスタの代わりにはならなくとも、新たな1ピースになりうることを証明した。

終盤にリリーフが5失点して逆転されたが、それをはね返した意味は大きい。首位巨人との6・5ゲーム差を死守。広島は最後まであきらめない。【村野森】