阪神鳥谷敬内野手(38)が25日、ヤクルト阪神20回戦(神宮)の試合後、意味深なコメントを残した。今季神宮での最終戦を終えたことについて「自分もこれが最後になるかもしれないので…」と発言した。5年契約の最終年。ここまで代打中心の出場機会で、打率2割1分1厘と本来の実力を発揮しきれない中、あらためて今季に懸ける不退転の覚悟が浮き彫りになった。

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6連勝を逃し、蒸し暑さが体にこたえる神宮の夜。鳥谷は虎党から降り注ぐ熱のこもった叱咤(しった)激励の声を全身に浴びながら、落ち着いた表情のまま三塁内野席前を歩いた。今季最後の神宮ゲームが終わった。応援してくれたファンへの思いを-。そんな問いを受けると、「自分もこれが最後(の神宮)になるかもしれないので、いい打席だったと思います」と返した。

この日は4点を追う9回1死で代打登場し、マクガフから遊撃内野安打。激走でなんとか反撃ムードを高めようとしたが、チームの連勝は5でストップした。シーズン24試合を残し、3位広島と3ゲーム差。CS圏内滑り込みへ厳しい戦いが続く中、38歳はあらためて今季に懸ける不退転の覚悟を言葉にして、自分自身を奮い立たせた。

今季は5年契約の最終年。以前から「プロ野球選手は1年1年が勝負。ダメだったら辞めないといけないのは毎年のこと」と話してきた男にとっても、今まで以上に重たい決意で臨むシーズンとなっている。2月の沖縄キャンプ中には「年齢的にも立場的にも、より強く進退を考えないといけないタイミングに来ている」と覚悟を決めていた。そんな思いが日々、全身を突き動かしている。

もちろん、今はグラウンドで最大限のパフォーマンスを発揮するため、悔いのない準備に専念している。たとえ周囲が去就に注目を向けようとも、スタイルがブレることはない。今季はここまで代打中心の出番で打率2割1分1厘。打点はまだない。今こそ生え抜きスターの底力を見せつけるタイミングといえる。

開幕前、「最後はやれるだけのことをやって、納得した形で白黒はっきりつけたい」と力を込めた。まだ「白黒」の決着はついていない。悲願の日本一への道も閉ざされてはいない。勝負の1カ月。何度も修羅場をくぐり抜けてきた背番号1が、あえて覚悟を口に出すことで、自身の闘志に火をつけにかかった。