日刊スポーツ評論家陣が語る「野球塾」は、近鉄、日本ハム、楽天で監督を務めながら、V2を達成した梨田昌孝氏(66)です。チーム巻き返しに、8年連続負け越しの打倒巨人に加え、中日対策の必要性を訴えた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

   ◇   ◇   ◇

巨人が5年ぶりの優勝を遂げたのは、原監督の勝負勘が随所にスパイスを効かせた。百戦錬磨の指揮官がその瞬間に涙をこぼしたのは、いかに苦しいシーズンだったかを物語っていた。

なにもFA、外国人らの補強が的中したわけではない。丸、デラロサ以外は当たらなかった。ただ、坂本勇、丸ら主力の働きに加え、若手を見極めながらの伏兵起用に采配の妙があった。

投打に“ここ”と決めたときの早めの見切り、選手交代で流れを変え、策を仕掛けながら、チャンスとみるや勝負にいった。いわゆる監督のやりくりでシーズンを乗り切ったといえるだろう。

セ・リーグは巨人をはじめ、中日、阪神の3球団が新監督だったが、キャリアがモノをいったということだろう。常勝を宿命づけられている球団だけに、これ以上負けるわけにはいかなかった。

その巨人に07年以来、12年も続けて勝ち越していないのが阪神。今シーズンの対戦成績も9勝15敗(23日現在)と大きく負け越した。その数字が示すように両軍のチーム力には随分と差があった。

阪神は投打に外国人の不振が響いた。特に新戦力のガルシアは計算外で、長打を期待されたソラーテは論外だった。才木、小野ら若手の伸び悩みも痛い。西の加入も打線の援護に乏しかった。

巨人は4番岡本が苦しみながらも腰を据えた打力が身についた。ヤクルトも村上という「4番」が育った。阪神は期待株の大山が怖さを感じさせるまでに至らなかったのは誤算だった。

メッセンジャー、鳥谷が抜けてチームの“顔”が消えていく。簡単に「エース」「4番」が台頭してくるとは思えないが、低迷脱出を図るのに、ここはチーム強化の優先事項になる。

また阪神にとって、2年連続で負け越した“中日対策”も大テーマだ。ビシエド、アルモンテに痛打される場面が目立ったし、無安打無得点に抑えられるなど鬼門だった。

阪神は残り4試合になったが、どの球団も同時に来季へのチーム作りを進めている。20年シーズンに向けたサバイバルが火ぶたを切ったということだ。