矢野阪神がDeNA戦(横浜)に勝利し、逆転クライマックスシリーズ(CS)進出に望みをつないだ。

6番中谷将大外野手(26)が4回に左前へ先制2点打を放つなど一挙4得点。執念の猛攻で白星をたぐり寄せた。脳腫瘍の影響で現役引退する阪神横田慎太郎外野手(24)から勇気をもらったナインが輝きを放った。29日から本拠地甲子園で運命の2試合を迎える。

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4回の猛攻に大逆転CSへの思いが詰まっていた。2四球と糸原の内野安打で1死満塁。打席に入った中谷が、追い込まれながら今永の直球をつかまえた。「チャンスだったので何とか、前に飛ばそうと思った」。打球は左翼前にはずみ、走者2人が生還。続く木浪はなお1死一、三塁から絶妙スクイズ。梅野は右前適時打とノンストップの攻撃で4点をもぎ取った。

ナインの心を震わせたのは、決死のプレーを見せた男の姿だ。脳腫瘍からの復帰を目指した横田の引退試合が26日のウエスタン・リーグのソフトバンク戦(鳴尾浜)で行われた。8回守備では本塁突入を試みた走者を渾身(こんしん)のノーバウンド送球で刺した。試合後のセレモニーで騎馬を作って横田を担いだ中谷も「野球が出来ることに感謝をして、横田の分も頑張ります」と涙していた。

負ければ“終戦”。トーナメントのような明日なき戦いには、独特の緊張感が漂った。横田の引退試合に駆けつけて花束を渡した矢野監督は「恩返しじゃないけど、俺らも頑張っている姿を見せていく日にもなったと思う」とその姿に感銘を受けた。この日の試合前ミーティングでは「明るくやろう! 楽しくやろう!」と、ナインを鼓舞していた。

残り2試合で2勝がCS進出への条件だ。中谷は「勝ったらまた(横浜に)戻ってくる。そういう中で今日は(DeNAに)勝てて良かった」。矢野監督も「あと2つ、そういう試合をしていくのが俺らの野球」と力を込めた。チームは4連勝で月間勝ち越しも決めた。横田魂を宿した虎ナインが奇跡を起こす。【桝井聡】

▼セ・リーグ3位争い 3位広島は70勝70敗3分け、勝率5割で全日程終了。4位阪神は4連勝で67勝68敗6分けとなり、残りが2試合。2連勝ならば69勝68敗6分け、勝率5割4厘で広島を抜いて3位に浮上。1勝1分けの場合、広島と阪神が勝率5割で並ぶが、同率の場合、セの規定では勝利数の多い方が上位。勝率5割で並んだケースは、70勝の広島が3位となる。