鉄腕ルーキーが、気迫の投球で逆転勝利を呼び込んだ。ソフトバンク甲斐野央投手(22)が、自ら招いた7回1死一、二塁のピンチを無失点で切り抜けた。

1点を追い、これ以上リードを広げられては苦しい場面。先頭秋山を内野安打で出し、1死から森への四球で2人の走者を背負った。だがこの日打点を挙げていた4、5番相手にひるまなかった。中村を3球三振。続く外崎も空振り三振で、無失点だ。「雰囲気にのみ込まれないようにと思っていた。楽しめはしなかったけど、集中できていました」。風格すら漂わせ、堂々とベンチへ帰った。

直後に味方が逆転し、7日楽天とのファーストS第3戦に続いて「連続白星」となった。新人がファーストS、ファイナルSの両方で勝つのは甲斐野が初で、クライマックスシリーズでは3試合無失点。プロ1年目にして、幸運を呼ぶシリーズ男となりつつある。

すべてに全力投球の姿勢が、好結果を生んでいるのだろう。7日の試合を終えて車に乗り込みながら「全部出し切りました」と疲れ果てた表情だった。クラブハウスでも思わず、高村投手コーチに「これで終わりじゃないですよね…」と漏らした。「集中して、気を抜いて、オンオフの連続で難しい」と話していたが、グラウンドに入れば別。1日の移動日を挟んできっちり心も体も仕上げてきた。

まだ日本一へ道半ば。「今日は今日で切り替えて、また明日からやっていきます」と前だけを見た。【山本大地】

▼ソフトバンクのルーキー甲斐野央投手がファーストS<3>戦に続いて勝利投手。プレーオフ、CSで新人が2勝したのは、75年山口(阪急)06年柳瀬(ソフトバンク)に次いで13年ぶり3人目。ファーストS、ファイナルSの両方で勝った新人は甲斐野が初。