令和の怪物は千葉へ-。「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が17日に都内で行われ、大船渡(岩手)の最速163キロ右腕・佐々木朗希投手(3年)は4球団競合の末、ロッテが交渉権を獲得した。11年の東日本大震災を経験し、家族や仲間を人一倍大切にしてきた。今月の台風19号など、自然災害に毎年襲われている日本を、国内最速165キロ超えに挑む直球で元気にする。

佐々木に、ようやく少しだけ本来の笑顔が戻った。テレビ画面越しに井口監督からのメッセージを受けると、会見席に座ったまま頭を3度下げた。「どこの球団になるのかと思っていたので、ホッとしました」。左隣に座る国保監督と両手でガッチリ握手した。

早速ロッテの帽子をかぶると、幼少期から苦楽を共にしてきた仲間もいる野球部員54人のもとへ。計9度胴上げされ「家族や支えてくれた人たちがいたからこそ今がある。僕1人ではここまで成長できていないので感謝の気持ちでいっぱいです」。大船渡を去る寂しさも抱きながら「(うれしさは)100%です」と千葉へ旅立つ覚悟も決めた。

U18W杯での仲間だった星稜・奥川、東邦・石川の抽選結果にも表情ひとつ変えなかった。日本ハム、ロッテ、楽天、西武と4球団からの1位指名。会場の父母らが沸く中でも、多少まばたきの数が増えた程度。奥川に対しては「対戦する機会もあると思うので、その時には頑張りたい」。球速の目標を問われても「今ある日本最速を超えられたらいいかなと思います」と考える間もなく淡々と返答した。

だが、東日本大震災や今月に猛威を振るった台風19号についての問いには眉を寄せながら、少し間を置いて言葉を発した。「自分の活躍する姿をしっかり届けて、少しでも元気になってくれればと思います」。野球ファンだけでなく、日本全国への決意表明だった。

11年の東日本大震災では陸前高田市で父功太さんら家族を失った。大船渡に移住し、野球を通じて笑顔を取り戻させてくれた友人や母陽子さんと一緒に苦楽を共にするため、地元高校へ進学。今回の台風でも岩手沿岸部も被害が多く、復興、復旧への思いについては「プロでは日本一のピッチャーに、チームを優勝に導けるような投手になって恩返しがしたい」と誰かを喜ばせることに重きを置いた。

今年4月のU18日本代表候補合宿で163キロを計測したが、今夏の岩手大会決勝では出場しないまま甲子園出場を逃した。9月のU18W杯でも右手中指負傷で1イニングの登板だけ。「これからがスタートです」。千葉の海から新たな夢へ船出する。【鎌田直秀】