阪神が来季、15年ぶりの優勝を果たすための克服課題を日刊スポーツ評論家陣が「猛虎再建論」と題し、リレー形式で提言します。第1回は監督として近鉄と日本ハムの2球団を優勝に導いた梨田昌孝氏(66)です。得点力アップに複数の外国人獲得の必要性を訴え、野手3人制で競争させる具体案を語った。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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巨人-ソフトバンクの日本シリーズを現場で取材していると、阪神のチーム力との差を感じてしまう。終盤の戦いでリーグ3位になったが、来季は全体的な底上げが必要だろう。

セ・リーグは巨人を倒さないと頂点に立てないことがはっきりした。阪神の今季対戦成績は10勝15敗で、8年連続負け越し。どのチームよりも、苦手意識の強い球団といえる。

その点、今回のドラフトで上位6人中5人まで高校生を指名したのは不思議だった。2軍の置かれたチーム事情はあるだろうが、少なくとも来季の優勝を狙う補強とは思えないからだ。

意外だったのは明大森下を広島が一本釣りしたことだ。阪神が外れ1位で西純矢(創志学園)の指名に踏み切ったが、素材に乏しかったとはいえ、それなりに大学、社会人の即戦力選手を指名すべきではなかったのか。

これで、チームの浮上が外国人補強の成否にかかっていることが鮮明になった。わたしは長打力のある助っ人パワーなくして、阪神の優勝はあり得ないと断言したい。

矢野監督1年目のチーム538得点はリーグワーストで、83本塁打は同5位だった。巨人の663得点、183本塁打と大差をつけられたから、この差を埋めない限りは追い越せない。

正直いって、マルテの「4番」は寂しい。日本シリーズは巨人ゲレーロ、ソフトバンク・デスパイネ、グラシアルら助っ人の迫力は試合前練習から際立っている。ぜひとも、相手に怖がられる大砲が欲しい。

それも1人に固執することはない。マルテの残留を前提にするなら、内、外野を守る外国人を1人ずつ取って、少なくとも野手を3人そろえたい。できれば右打者が理想だ。

福留、糸井らの主力も年齢的に厳しくなってきた。今年のジョンソンが示したように、外国人1人にメドが立てば、チームはガラリと変わる。

ドラフト補強を見る限り、いかなるチーム作りをしようとしているのかが見えてこない。腹を据えてということだろうか。野手助っ人の成否が、来季の生命線になることは間違いない。