侍フェラーリが日本に勝利をもたらした。プレミア12スーパーラウンド(SR)初戦、オーストラリアに1-2と押し込まれた7回、代走周東佑京外野手(23)の快足が光った。二盗、三盗と立て続けに決めると、源田のセーフティーバントで本塁を陥れ同点。ラグビーW杯で活躍した松島幸太朗&福岡堅樹のフェラーリコンビに、ひけを取らないスピードで、逆転勝ちの立役者となった。

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タッチアウトに伸びる相手投手の左グラブを尻目に、侍フェラーリがホームに滑り込んだ。1点を追う7回無死一塁、吉田正の代走で周東が入った。まずは6番浅村の5球目で二盗。さらに2死となった8番源田の3球目、三盗を決めた。直後、源田の投前へのバントにスタート。同点走者として生還した。

左膝下を泥だらけにしながら周東は言った。「よけれると思いました。タイミング的に。投手も野手もバッター集中していたので絶対いけるぞと思った。源田さんならああいうことをしてくれる。でもまさかバントとは思わなかった」。求められた足で、勇気を持って殊勲の快走を見せた。

侍魂は受け継いでいた。1日、右足第4趾(薬指)基節骨骨折で離脱した秋山から2本のバットを岸経由で授かった。金色のNPBマークが入った打棒。沖縄合宿期間中、打撃開眼を図り秋山に何度も助言を求めていた。足だけでなく、少しでもレベルアップを目指すからこそのアクション。「できればもっといろいろ聞きたかった。でも短い時間でしたけど、自分にとっては、本当に大事な時間になりました」。激励に訪れた秋山の目の前で“恩返し”のホーム生還を届けた。

1年前、海を渡った。コロンビアでのU23W杯出場後、プエルトリコでのウインター・リーグに参加。ハングリー精神をぶつけ合う過酷な環境下、周東のスピードは衝撃を与えていた。「なぜかぼくが走ると、みんな笑うんですよ」。プエルトリカンもあきれさせるほどの足。1年後、侍の切り札となり、そのプエルトリコ戦(6日)で盗塁を決めたことが、自信になっていた。

勇気を持った結果が自信を深め、その自信がさらなる勇気を吹き込む。「自分の中では隙あるピッチャーが多い感覚がある。今日みたいな仕事ができるのが一番。気持ちも落ち着きを保って、いつも通りのプレーをしたい」。地に足つけて、次へのスタートを切る。【栗田成芳】

◆周東佑京(しゅうとう・うきょう)1996年(平8)2月10日、群馬県生まれ。東農大二3年夏の県大会ではエース高橋光成の前橋育英に敗れ準優勝。東農大北海道オホーツクでは14年明治神宮大会、15~17年全日本大学選手権出場。17年育成ドラフト2位でソフトバンク入団。昨年は27盗塁でウエスタン・リーグ盗塁王。今年3月に支配下選手登録された。179センチ、67キロ。右投げ左打ち。

▼代走周東が7回に二盗、三盗と連続成功。プロが参加した主要3大会(五輪、WBC、プレミア12)で、日本代表の1試合2盗塁以上は00年シドニー五輪の田口壮、06年WBCのイチローと西岡剛、17年WBCの田中広輔に並ぶ最多タイとなり、イニング2盗塁は初めて。また、主要3大会での三盗は06年WBCの岩村明憲以来、13年ぶり。