まだまだ、やる-。今季限りで阪神を退団した鳥谷敬内野手(38)が14日、大阪市内で「国際ロータリー第2660地区」の地区大会のゲストに招かれ、ラグビー元日本代表の大畑大介氏(44)と公開シンポジウムに出席した。現在は他球団移籍を目指して交渉を続けている。約2カ月ぶりとなる公の場で「今後については本当に決まっていない」と明かし、あらためて現役続行への強い意欲を明言。集まった若者たちに挑戦の大切さを説いた。

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シンポジウムの冒頭、鳥谷は早々に現状を明かした。

「今後は本当に決まっていないです。野球をできるのか辞めるのか、自分が聞きたいぐらいです」

10月中旬以来となる公の舞台。親交のある大畑氏からちゃめっ気たっぷりに進退の話題を振られると、笑顔で返して笑わせた。

今季限りで阪神を退団。現役続行を目指し、オフは例年以上のハードトレーニングを続けている。

「とりあえず自分の体はしっかり動ける状態にして、いい話が来るのをひたすら待っている状態です」

複数球団から動向を調査されながら、12月中旬現在、まだ移籍先は決まっていない。決して楽観できる状況ではないが、「これまで筋肉系のケガはない。まだまだできるのかなと思っています」。野球への情熱はまだ一切衰えていない。

シンポジウムのテーマは「若者が躍進する世界を目指して」。壇上では真後ろに座った数十人の学生に対し、苦境での考え方を熱く説明する場面もあった。

「真剣に向き合ってきたから壁はある。壁があるのは悪いことではない。自分が頑張ってきた証でもある。壁にぶつかったら、自分はこれまで真剣に向き合ってきたんだ、この壁をぶち破ったらすごい広い世界が広がっているんだ、と思ってやればいい」

38歳。現役続行といういばらの道を選んでいるのは百も承知の上だ。それでも5人の子供を持つ父親として、チャレンジ精神だけは失いたくないという。

「プロ野球選手は寿命が短い。いろんな辞め方があると思うけど、自分自身がどう思って辞めるかが重要なんだなと、最近感じています。どういう形で来年できるのか、辞めていくのか。それは分からないけど、そういう状況に立てているのは、タイガースにお世話になった期間があるから。そこに感謝して、まだまだやるんだ、という気持ちを大事にしていきたい」

偽らざる胸中を伝え続けることで、最後まで若者たちに挑戦の大切さを訴えかけた。【佐井陽介】

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◆ロータリー さまざまな職を持つ人々、市民のリーダーが会員となり、住む地域、世界をより良くしようと社会奉仕、人道的活動などを行う団体。ロータリークラブは約110年前に米国で生まれ、現在は200超の国、地域に3万6000を超えるクラブがあり会員は約120万人。日本には約2300のクラブ、約9万人の会員がいる。

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◆鳥谷のここまで

▼出番激減 遊撃復帰で勝負をかけたが、開幕から不振。先発出場の機会も少なく、代打としてもなかなか結果を残せず苦しんだ。

▼これが最後 8月25日のヤクルト戦とのビジター最終戦で「これが最後(の神宮)になるかも」と意味深発言。

▼会談 発言を受け、翌26日に谷本球団副社長が会談設定の意向を示す。

▼“引退勧告” 同29日に球団から「引退勧告」を受けていたことが明らかに。同30日にその事実を認め「どうするかはまだ考えていません」と説明。

▼退団 同31日に会見し「タイガースのユニホームを着てやるのは、今シーズンが最後になります」と退団を表明した。

▼タテジマ最後 10月13日のCSファイナルステージ3戦目の巨人戦で、代打で二ゴロに倒れたのが阪神で最後の打席となった。他球団での現役続行を目指し「どうなるか分からないけど、やってきたことを信じて、新しい野球人生を頑張ります」と力を込めた。

▼自由契約 12月2日に保留者名簿が公示され、鳥谷は名簿から外れて自由契約選手となった。