さあ、ギアチェンジだ。阪神藤浪晋太郎投手(25)が17日、鳴尾浜球場で熱投した。寒空の下、この時期では珍しい3日連続ブルペン入り。

一気に球数を増やし、年明け最多となる71球を投じた。昨季はプロ初の未勝利に終わり、背水の覚悟で臨む20年。まずは1軍沖縄キャンプに向けて、状態を上げていく。

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時にはほえた。投球の軌道がイメージからズレると、「うわ~違うっ!」と自らに活を入れた。まだ1月中旬だというのに、藤浪は早くもギアを入れ替え始めた。

「去年あったような、なかったような…」と記憶が定かでないほど珍しい、この時期の3日連続ブルペン入り。舞台が連日気温10度を下回る鳴尾浜だから驚きは増す。背水-。言葉に出すまでもなく、誰もが25歳の覚悟を感じ取れた。

15日は約20球。16日は47球。この日は小休止するかと思いきや、迷うことなくブルペンの扉を開いた。

「(前日まで)球数も少なかったし、明日が(練習)休みというのもあったので。肩をしっかり作ってしまうこと、状態を上げることと、技術練習ですね」

小豆畑2軍サブマネジャーを座らせて、年明け最多となる71球を投げ込んだ。

当然のようにカットボール、スライダー、フォークなど全球種を確認。ボールのバラつきは少なく、直球には重みが感じられた。ここは南国かと勘違いしそうになるほどの完成度。表情からも調整への手応えが見え隠れする。

昨季はここ数年の課題となっている制球難を克服できず、プロ7年目で初の未勝利に終わった。矢野監督はすでに背番号19の1軍沖縄キャンプスタートを示唆しているが、本人の一挙手一投足からは危機感だけがにじみ出る。全身を突き動かすエネルギーとなる、前向きな危機感だ。

昨年11月の高知秋季キャンプでは山本昌臨時コーチから手首の使い方などを伝授された。米国発のトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」の力も借り、投球動作の解析も進んだ。引き出しを増やし、今度は技術を体に染みこませる段階に入っている。

キャンプインまで残すは2週間。1日も無駄にするつもりはない。「今日はしっかり投げたかったので」と充実感たっぷりの藤浪。復活へ、綿密に立てた計画を黙々と遂行していく。【佐井陽介】