ビッグベイビーから、2代目若大将へ。巨人原辰徳監督(61)が17日、世界一に輝いた09年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で監督、投手コーチとしてタッグを組んだ山田久志氏(71=日刊スポーツ評論家)と対談した。「4番三塁」に固定する方針の岡本の新ニックネームを披露すると、山田氏からは東京五輪までの前半戦は先発を中4日で回すプランを伝授された。【取材構成=寺尾博和、前田祐輔】

  ◇    ◇    ◇

山田氏 宮崎キャンプから、いいうわさでしたよ。今年は1軍~3軍が一緒にやっていた。

原監督 (阿部)慎之助にもその意思があって。去年からのスタッフもいる。そういう面ではかなり任せました。自主性というものがすごく出てきましたね。

山田氏 去年はかなり監督がこうしろ、ああしろと言ってた。

原監督 去年は全部やりました。今年は自分の意思を伝えられている。その意図の中で彼らに知恵を出してくれということです。

山田氏 昨年は坂本を2番。最初に聞いた時は「えっ」と思いました。もったいないかなと。

原監督 でもやり抜いたでしょ。(坂本は)一番打席数が多い。いいバッターが多く打席に立った方が相手チームは嫌。僕の意図がちゃんと伝わってます。

山田氏 (丸と)2人は心配ないとして、岡本も去年は苦しんだけど何かつかんだ気はしますね。

原監督 後半特にいいものを出しました。その位置からしっかりキャンプに入って、非常に今年は頼もしいですね。自覚というもの、自分の立ち位置、目標、モチベーションがすごく上がっている。もう今年はビッグベイビーという言葉はやめようと思ってます。

山田氏 いよいよ岡本を一人前とした感じですか。なかなか厳しい監督が。

原監督 僕の中では、いつも『若大将』って言ってるんですけど、どうもそれがみんなに伝わってない。2人の間では『若大将』『はい』って言ってね、非常に満面の笑みを浮かべてるんですけど。しかし浸透していない。周りは認めてません。ダメだったらバカ大将ですよ(笑い)。

山田氏 6年目にしてジャイアンツの4番を張れたら頼もしい。

原監督 競争ができるチームになってきた感じはしますね。春は特に。ファースト、セカンド、外野の一角、キャッチャー。4つのポジションは競争という位置付けですね。

山田氏 去年はキャッチャーうまく使いましたね。

原監督 去年はいろいろな選手起用、作戦もやって、落ち着きがないという風に感じられたかもしれません。今年は少し落ち着いた野球がしたい。レギュラーも6人から7人位を固定したい。打順も。

山田氏 今年の野手ならやれるんじゃないですか。二塁のポジションですね。

原監督 三塁手が固まったというのも大きいですね。セカンド、ファースト。ここは一本立ちした選手が出てきてくれないかと。(二塁)吉川尚、(一塁)大城。そこに割って入ろうとする陽岱鋼、中島。亀井は使い勝手がいい選手です。

山田氏 亀井には去年助けてもらいましたね。

原監督 自分の中では、本当にMVPに値します。困った時に1番、困った時に5番、困った時にファースト…。去年は慎之助の存在も大きかった。ピンチヒッターという中で。しかし慎之助の代わりは誰もできない。代わりがいなくても戦うためには、レギュラーを固定する。そういう野球をしたいと思いました。

山田氏 ピッチャーは山口の穴ですね。

原監督 山口がいなくなって僕はプラスにしなきゃと思ってます。戸郷、桜井も含めて、去年経験を持った人たちがさらに上積みですね。それと新外国人のサンチェス。6人の先発が高いレベルで出てきてくれたらというのがありますね。

山田氏 後ろの方は大体決まりですか。

原監督 デラロサと中川、その辺りでしょうね。

山田氏 もう1人ほしいですね。3人ほしい。8、9回を任せるピッチャー。

原監督 つくりますよ、3人。

山田氏 やっぱり去年やった自信ですよ。あのメンバーで乗り切れたんだから。後ろは他のチームに比べて弱いと思ってました。

原監督 本当ですね。よくやったと思います。やりくりです。固定観念は全くなかったです。

山田氏 それがいいんですよ。今は固定観念にはめようとして、次いくと決めてしまうから選手に負担がかかるんです。今年はシーズンも変則になって大変ですね。

原監督 開幕が早いのと、オリンピック中に1カ月近くブレークが入ります。オールスターまでに99試合。僕は突っ走りたい。

山田氏 監督は今は12球団の中で発信力が一番ある監督です。中4日はどうですか。五輪の休みがあるから、いい選手からつぎ込んでいった方が。

原監督 5月ぐらいから中4日でいってもいいかもしれませんね。6連戦が続く。(全員)中4日はともかくとして火曜日に投げる人が日曜日に投げるとか。

山田 それができるのは今シーズンしかない。

原監督 何人か(中4日で)いける投手はいるんですよ。考えます。素晴らしいです。1カ月のブレークでまたどうするかですね。

 

◆山田久志(やまだ・ひさし)1948年(昭23)7月29日、秋田県生まれ。能代高から富士鉄釜石(現新日鉄釜石)を経て、68年ドラフト1位で阪急入団。2年目の70年から86年まで17年連続2桁勝利。76年から3年連続でMVPに輝き、最多勝3回、最優秀防御率2回、最高勝率4回。88年に現役引退。プロ通算284勝166敗、43セーブ、防御率3・18。94~96年オリックスコーチ。99~01年中日コーチ。02年~03年途中まで中日監督。06年に殿堂入り。09年WBC日本代表コーチとして原監督とともに世界一に輝いた。