スピード自慢は朗希だけじゃない。最速167キロを誇る巨人の新外国人チアゴ・ビエイラ(27=ホワイトソックス)が18日、対外試合初登板となったロッテとの練習試合(沖縄セルラー那覇)で最速158キロをマークした。NPB最速記録更新も視野に入れる大型右腕は、サッカー大国ブラジル出身らしく、相手をだます「マリーシア投法」で1イニング無失点。巧みな駆け引きと伸びしろあるスピードで相手を翻弄(ほんろう)してみせた。勝利の方程式入りへ、首脳陣の評価も上昇一途だ。

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サンバのような一定のリズムを奏でていたビエイラが、突然テンポを遅らせた。2点リードの7回1死走者なし。藤原をカウント1-2と追い込んだ5球目だった。高く上げた左足。そこからグッとためた。「とにかく打者のリズムを崩すことだけを考えている」。それまでの投球動作から、遅れることおよそ0・5秒。完全にタイミングを外し、真ん中高め直球で空振り三振に仕留めた。

サッカー大国ブラジル生まれ。13歳の頃に約2年半サッカーに打ち込んだ男には、本場の技が下地に備わっている。サッカー界で相手をだます意味の「マリーシア」のごとく、1人時間差投法を自然に体現する。「特別なものは何もしていないんですけど」。ピッチからマウンドに舞台を移しても、駆け引きのうまさは体が覚えている。

相手をだます術は、日本でも学んだ。「ボールを構えるときに胸の辺りじゃなく、おへその部分にして、あまり変化球とかをばれずにって(投手コーチ陣に)教えてもらいました」。より強固にした「マリーシア投法」で1イニングを無安打無失点。対外試合初登板を終えた。

スピードでも驚かせた。テレビ中継での最速は香月に投じた5球目の150キロだったが、球団が計測したスピードガンでは最速158キロをマークした。藤原を三振に仕留めた球も中継では150キロだったが、157キロ。最速167キロを誇るリリーバー候補は「スピードではなく、気持ちを持ってマウンドにいつも上がっている」と謙虚さも忘れない。

“だました”のは、相手だけではない。9日のフリー打撃では25球中20球がボール。80%がストライクゾーンを外れた。13日の同メニューでも31球中19球がボール。制球難と言われていたが、この日は1四球を与えるも、別人のようにマウンドで踊った。原監督も「まあ、あのころはね。そういう点では、階段上っていると思います。実戦向きなのかもしれない」と評価を上げた。中川、デラロサにつなぐ7、8回の男として期待される。本場の「マリーシア」で、セ界をあざ笑う。【栗田尚樹】

▽巨人宮本投手チーフコーチ(ビエイラについて)「ボールにも力がありましたし。いろいろやっぱり工夫して投げているっていうのが彼の一番いいところじゃないですか。日本の野球はどうなんだ、こういったフォームで投げようとか、いろいろ試行錯誤しながら研究熱心にやっているのを評価していいと思います」

◆巨人の救援陣 抑えはデラロサ、8回は昨季16セーブの中川が務める予定。2人につなぐ中継ぎはビエイラに加え、高木、大竹、沢村、鍵谷、先発挑戦中の田口らが候補に挙がる。外国人枠はデラロサ、先発サンチェス、5番候補のパーラは決定的。ビエイラは残り1枠を、左ひじ違和感で離脱中の昨季8勝左腕のメルセデス、猛アピールで育成から支配下登録を目指すモタらと争うことになる。