いきなり新顔が飛び出した。兄は「おもしろ荘」出身の芸人。弟は有名ラーメン店出身。父はIT系のベンチャー企業の社長。「ザ・個人事業主」ファミリーの次男・巨人松原聖弥外野手(25)が、野球の舞台で爪痕を残した。プロ野球の対外試合が各地で再開。西武との練習試合(東京ドーム)に「9番・指名打者」でスタメン出場し、3回の第1打席に、右中間へ1発を放った。1軍未出場の育成出身の4年目。厳しい個の戦いに打ち勝ち、1軍の“出演権”を勝ち取る。

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俊足が売りの左打者・松原が、チャンスを得た。相手先発が左だったら、スタメンは石川だった。西武先発が14年ドラフト1位右腕の高橋光だったからこその出番だった。結果を残せねば“売れない”世界。1回目の出演機会は1-1の3回。25歳の若手は、初球内寄りカットボールを仕留め、右中間スタンドの最前列へ着弾させた。お笑い「第7世代」ばりの積極的な攻めで、ベンチで見守る原監督を笑顔にさせた。「積極的に行っていい結果になってよかったです」と笑った。

チャンスを与えてくれた指揮官は、技術も伝授してくれていた。松原はこれまで、右足を高く上げて打つ打撃スタイルだった。それをこの1週間で変えた。「監督からの一声だったんですけど、『足を上げて打つよりコンタクト率が上がるんじゃない』という言葉をもらったので、継続してやっています」。同じ左の先輩・亀井にもアドバイスを求め「すり足打法」を舞台袖で“稽古”し、1軍の舞台で結果を残した。

長きにわたる個人調整、練習期間。「フレンチトーストがうまくなりましたね。こだわりは甘めです」と言いながらも、#STAY HOME 期間中に上達したのは、料理の腕前だけではない。課題だった速球、変化球の対応に取り組み、実戦の中で少しずつ手応えをつかみつつある。

“1発屋”で終わるつもりはない。春季キャンプで1軍メンバーに抜てきされたが、第3クールから2軍降格。それでも、貪欲に前へ出るタイミングを見計らっていた。3月13日に再び1軍昇格を勝ち取ると、それ以降、椅子を明け渡すことはない。丸、亀井、パーラと外野の敷居は高いが、もちろん2番手で甘んじるつもりもない。育成で入団し、4年目で見えてきた初の1軍。「開幕スタメンが目標ですけど、まずは開幕1軍でシーズンに入りたい」。兄にも弟にも、父にも負けず、劣らず…。プロの世界で成功してみせる。【栗田尚樹】

<松原聖弥アラカルト>

◆生まれ 1995年(平7)1月26日、大阪市出身。

◆球歴 八尾フレンドボーイズで野球を始め、中学時代は大東畷ボーイズ(ともに大阪)に所属。仙台育英(宮城)では3年時の12年夏に甲子園出場も、ベンチ入りメンバーに入れずスタンドから応援した。1学年後輩はソフトバンク上林ら。卒業後は明星大で外野手に転向。首都大学リーグ2部で5季連続ベストナインを獲得し、同大初のプロ野球選手になった。

◆プロ入り 16年育成ドラフト5位で入団し、18年7月に支配下登録された。年俸は推定600万円。

◆サイズ 173センチ、72キロ。右投げ左打ち。

◆50メートル走 5秒8。

◆昨季成績 1軍出場なし。イースタン・リーグ96試合に出場。打率2割8分7厘、5本塁打、17盗塁。