背番号15が、帰ってきた。日本ハム上沢直之投手(26)が6月30日、本拠地開幕となるソフトバンク1回戦(札幌ドーム)で先発し、5回2安打1失点と好投した。

左膝骨折の悲劇から、378日。今季初の引き分けとなり勝敗こそつかなかったが、完全復活を確信させる69球だった。いったん1軍登録を外れる見込みも、18年11勝の右腕の帰還は、手薄な先発陣の強力なピースとなるに間違いない。

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約1年ぶりのマウンドで、しびれるような投手戦を演じた。先発した日本ハム上沢は「お客さんがいない中、違和感を少し感じる部分もありましたが、楽しみながら投げることができました」。復活白星はお預けとなったが、5回2安打1失点で4奪三振。「思っている以上の力が出たような気がした」と、爽やかに笑った。

滑り出しは、圧巻だった。1回、初球は150キロの真っすぐ。外角低めに、ずばりと決めた。1番栗原を外角高めの直球で空振り三振に仕留めると、続く柳田を3球三振、今宮を外角低めいっぱいのスライダーで見逃し三振に仕留めて、3者連続三振スタート。3回に2四球と制球を乱し先制点を許したが、4回に味方が追いついてからは落ち着きを取り戻した。

忘れもしない、昨年6月18日DeNA戦(横浜)。左膝に打球が直撃し、皿の骨が真っ二つに割れた。長いリハビリ生活を乗り越えて迎えたこの日、選んだ登場曲は「ファンキー・モンキー・ベイビーズ」の「ありがとう」。こんな一節がある。「君と寄り添って いくつも乗り越えた悲しみの夜を 僕は忘れない」。つらい日々を支えてくれた夫人と長女へ、感謝の思いを込めた。

「正直、結果は出したかった。チームに勝ちを付けたかった。監督の思いを感じていたので、なおさら」と上沢自身に悔いは残ったが、送り出した栗山監督は「良かった。よく帰って来てくれた。言葉にまとめられないくらい、うれしかったし、感動した」と、新たに始まった“物語”に胸を震わせた。開幕から10試合を終えて、先発陣に勝ちがついたのは、まだ2試合だけ。指揮官は「完投ペースで野球の試合を作れるのは、さすが。ローテーションを守れるという投球が垣間見られた」。エース級右腕の戦列復帰は、心強い。【中島宙恵】