阪神先発の岩貞祐太投手(28)が、故郷熊本を勇気づける今季初白星だ。開幕から3度目の先発マウンドで6回3失点。過去3度の対戦でいずれも負けていた広島のエース大瀬良との投げ合いで力投した。

「先制してくれていたので、思いきって腕を振っていくことだけを考えて投げました」

初回に2点の先制点をもらうと、課題の立ち上がりは丁寧に入った。1番ピレラから3者凡退。ここ2戦とも失点している初回を無失点に抑え、流れに乗った。2回以降は毎回走者を背負ったが、5回まで無失点と粘った。「梅野が配球でいい部分を引き出してくれた」。伸びある直球にチェンジアップ、フォークと落ちる2球種を使い分け、的を絞らせなかった。6回に3失点したが、9安打を浴びながら無四球で試合をつくった。

地元を思い、懸命に左腕を振った。出身の熊本を含む九州南部は3日夜からの大雨で大きな被害が出ている。ヒーローインタビューでは「やっぱり心配が第一。これ以上、被害が大きくならないことを祈るしかないという気持ちです」と不安げな表情を浮かべた。16年に熊本地震が発生した後、故郷へ支援金や野球道具の寄付を行っている。「地震の時もそうですが、今が(被害の)ピークじゃない」。離れた広島の地から、エールを白球に込めた。

チームの連敗を止める好投は、自身の嫌なデータも振り払った。試合前まで広島戦は1勝12敗と苦手にしていたが、関係なかった。矢野監督は好投をたたえた上で「ナイスピッチングと言ってあげたいけど。やっぱりサダにはもっと高いところを目指してほしい」と高い期待を込めた。

岩貞自身も90球での降板に「6回までしか投げられなかったのは大いに反省しないといけない」と、課題も持ち帰った。虎党が待ちわびた1週間ぶりの勝利。「今日の1勝を明日以降にしっかりつなげて、チームが浮上していけるキッカケに」。チームにも地元熊本にも、勇気を与える1勝となった。【奥田隼人】

▼岩貞は広島戦で、18年9月5日以来の通算2勝目。前年までこのカード12敗と、大の苦手としていた。また大瀬良と投げ合った過去3試合でいずれも敗戦投手となっていたが、ようやく一矢報いた。

▼岩貞は6イニング3自責点のクオリティースタート(QS)。阪神先発投手陣は今季13試合中7試合でQSを満たしており、QS率53・8%はセ・リーグ最高だ。