ソフトバンク九鬼隆平捕手(21)がプロ初のスタメンマスクをかぶり、自身もびっくりの初本塁打を放った。

3回無死で、左翼席へプロ初安打となる1号ソロをたたき込んだ。チームは敗れたが、新星の活躍が明るい材料になった。先週の西武戦から2週間の遠征を5勝6敗1分けで終え、本拠地に戻る。

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九鬼は全速力でダイヤモンドを回り、はにかんだ。「自分でもビックリです。体がうまく反応して打てた感じでした」。プロ4年目で初めて先発マスクをかぶり、迎えた3回無死の第1打席。日本ハム河野の直球を左翼席中段まで運んだ。その後も四球、いい当たりの右飛とバットでもアピール。「打てる捕手」を印象づけた。

打席では鮮烈な印象を残したが、捕手としては先発二保の5失点が響いてチームは敗戦。「キャッチャーとしてはチームの勝利が一番。しっかり反省して、次につなげていけたらと思います」と悔しさをあらわにした。

大阪出身だが、高校3年間は熊本・八代市にある秀岳館で過ごした。4日から大雨で深刻な被害が出ている地域だ。「(氾濫した)球磨川とかもよく行っていた。目を疑いましたよね。ここまで来られたのは八代で野球をしていたおかげなので…」。現地の厳しい状況を伝えるニュースを目にし、心を痛めている。「高校の時も地震があって、みんなで野球で(地元を)励ましていこうという思いでやっていた。今も同じ気持ちですね。できることは、ぼくがいいところを見せることかなと思う」。少しでも明るいニュースを届けたい。第2の故郷への思いをプレーに込めた。

2学年上で捕手登録の栗原が、持ち前の打力で一足先にブレーク。栗原同様、九鬼も高校日本代表の中心選手として注目された。チームには日本代表捕手の甲斐という高い壁があるが「とにかく結果を残して、1日でも多く1軍にいて貢献したい。今日の結果に満足するところは1つもない。いつでもキャッチャーを任されるような選手になっていきたい」ときっぱり。りりしい声で、貪欲に先を見据えた。【山本大地】

◆九鬼隆平(くき・りゅうへい)1998年(平10)9月5日生まれ、大阪府出身。秀岳館3年春夏に連続で甲子園出場。16年ドラフト3位でソフトバンク入り。19年5月26日ロッテ戦で1軍戦初出場。プロ初打席は初球の緩いカーブをよけきれず、頭部への死球というデビューだった。179センチ、78キロ。右投げ右打ち。

◆ソフトバンクの捕手事情 日本代表の常連の甲斐が開幕から12試合連続スタメンだったが、前カードの西武戦で6月26日から3試合連続逆転負けし、2日日本ハム戦も逆転サヨナラ負け。3日から工藤監督は「(甲斐の)切り替えも含めて。やってもらわないといけない選手なので」と奮起を期待し、甲斐を外した。捕手登録の栗原は打撃に専念させるチーム方針で、2試合は高谷が先発。この日は九鬼だった。7日楽天戦ではエース千賀が先発する見込みで、監督は「楽しみにしていてください。黄金コンビですから」と甲斐のスタメン復帰を示唆した。