巨人がファームスタッフの総スカウト化で、「金の卵」の見極めに力を入れている。新型コロナウイルスの感染拡大により、スカウト活動も制限される中、イースタン・リーグ公式戦が行われない日は、社会人や大学と試合を重ね、阿部慎之助2軍監督(41)ら首脳陣も逸材の発掘に目を光らせている。6月下旬には全国各地で野球指導に携わるOBを対象にOBスカウトを発足させた。大型補強だけではなく、育成の巨人へ-。かじを切っている。

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6月30日、巨人2軍は川崎市のジャイアンツ球場で、ENEOSとのプロアマ交流戦に臨んでいた。相手マウンドにはプロ注目の150キロ左腕の藤井聖投手(23=東洋大)。三塁側ベンチからは2軍首脳陣が、バックネット裏からはスカウトが視線を送り、「クロスチェック」していた。

実際に対戦したからこそ分かる阿部2軍監督らの印象と、スカウトの視点をすり合わせることも可能になる。今季は積極的にプロアマ交流戦を組んでいる背景について、大塚球団副代表は「2軍監督を含めてコーチも、ディレクターも、全部スカウト。相手チームの力を見てくれと。そこにスカウトも来ますよね。今年は全員でスカウティング活動しようということで始まった」と説明する。

昨季は2軍同交流戦は1年間で2試合のみも、今季は既に9試合(雨天中止含む)。13日にも中大戦が予定されている。コロナの影響で公式戦も減り、スカウトは視察も制限される。多くの交流戦を組むことで、その機会を増やしている。

大塚球団副代表は「今までどっちかって言うと『お金で優勝』とか言われていたじゃないですか。ウチは今、発掘とか育成にシフトし始めている」。同じく3軍制を敷くソフトバンクは育成から千賀、甲斐、大竹、周東ら多くの選手が1軍に定着しているのに対し「うちは(最近)10年で増田大1人」とスカウト体制の強化の必要性を感じた。

ソフトバンクは今季ここまでNPB球団以外との交流戦を3軍が14試合組み、2軍は行っていない。巨人は2軍が10試合、3軍も33試合。巨人2軍が対戦してきた中には早大・早川隆久投手(4年=木更津総合)、NTT東日本・上川畑大悟内野手(23=日大)らドラフト候補も多数いた。若手の経験の場を増やしながら、将来の有望株を探している。

6月にはOBスカウトを発足させた。少年野球の指導に携わる全国各地の球団OB21人と契約。将来活躍の見込みがある選手を、小、中学生時代から追いかけ始めた。全てはダイヤモンドの原石を発掘し、育成に力を入れるため。チームの底上げ強化を目指して、あらゆる手を尽くしていく。【久永壮真】