力と力の真っ向勝負に、今季本拠地最多4945人が興奮した。日本ハムの“直球破壊王子”こと渡辺諒内野手(25)が、異名にふさわしい名勝負に勝って、チームに6月22日以来の貯金をもたらした。2-6で迎えた7回の攻撃だ。3連続長短打などで3点をかえして、なお2死満塁。西武ギャレットの160キロ直球を左前へはじき返し、逆転の2点適時打とした。

160キロ前後の剛速球攻めに“直球破壊”の腕が鳴った。「そろそろ変化球が来るかなと思った」と迷いが生じた3球目こそ空振りしたが、以降は、ひたすら直球待ち。162キロ、161キロ、160キロ…。「人生で一番速いボールだった」と苦笑いも「変化球が来たら仕方がないと割り切った。捉えたと思ってもファウルになってしまうけど、最後の球は甘かった」。ファウルで粘って9球目。芯で捉えた値千金の一打に、一塁上で派手なガッツポーズをして喜んだ。

2回の第1打席では、先発松本の143キロ直球を“破壊”し、左中間席に運ぶ3号2ラン。栗山監督は「豪快さと緻密さを併せ持っている。あれは、しっかりバットを振れる人じゃないと打ち返せない。久しぶりに感動したし、良かったね」と逆転劇に大感激だ。

日刊スポーツが開幕戦に合わせて名付けた“直球破壊王子”が、ファンの応援ボードでも見られるようになった。「(球場の)ビジョンにも『直球を破壊してくれ~』と(ファンからのメッセージが)書いてあって『浸透してるんだな』と思ったんすけど…“王子”では、ないっすね」とピシャリ。「真っすぐが来なくなっちゃうじゃないですか」と困り顔をしたが「直球破壊選手とかで、いいんです」。チームに今季2度目の3連勝をもたらした主役。次回から“直球破壊王”と呼んでも、いいですか?【中島宙恵】

◆直球破壊王子の由来 今季の開幕前、日刊スポーツが各チームの開幕スタメンを予想。勝手に異名も添えた。4人の日本ハム担当は各自が案を持ち寄り、多数決で渡辺は「直球-」に決まった。ギャレットを砕いた一打でトレンド入りを果たし、着実に浸透中?

◆渡辺諒(わたなべ・りょう)1995年(平7)4月30日生まれ、茨城県出身。東海大甲府では2年夏の甲子園に出場し準決勝進出。13年ドラフトでは、外れ外れ外れ1位で日本ハム入団。昨季は二塁の定位置を確保。自己最多の132試合に出場し、初の2桁本塁打となる11本塁打。今季推定年俸3500万円。178センチ、85キロ。右投げ右打ち。