春季リーグ戦が約4カ月遅れで開幕した。

早大はドラフト上位候補に挙がる左腕エース早川隆久投手(4年=木更津総合)が自己最速の155キロをマーク、12三振を奪い1失点で初完投。通算8勝目とした。「この1勝は、自分にもチームにも自信になります」と喜んだ。

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人工芝の炎天下。最悪の条件にも、早川の気持ちが切れることはなかった。8回には、3者連続三振を奪う。この時点で球数は110球。ベンチに戻ると、小宮山悟監督(54)から声がかかった。「いけるか」「いけます」。

その裏の打席では、平凡な二ゴロにも全力で一塁を駆け抜けた。主将兼エースは「10番を背負っている。お手本にならないと」。6回、打球を右スネに受けたことなど忘れていた。123球を投げ抜き9回を6安打の1失点。自己最多の12三振を奪って初完投した。

立ち上がりから好調だったわけではない。1回、3番打者の2球目に155キロを記録して空振りを奪ったが、納得していなかった。「スピードは意識してません。それより力みが出て低めに決めきれなかった」。3回以降はカットボールを増やし、低めをついた。

ネット裏で見守ったソフトバンク宮田善久スカウトはこう評価した。「カットボールを使えるようになって崩れることがなくなってきた。左投手の欲しい球団は高い評価でしょう」。4月の活動自粛期間中、ボールは握らず、走り込みなどを黙々とこなした。「自分のやれることをやろうと思いました」。野球ができない環境を経て、たくましさを増した。開幕にこぎつけた周囲への感謝を何度も口にし「この1勝は自分にもチームにも自信になります」と喜んだ。【米谷輝昭】