9日に発表された20代審判員の感染判明までのNPBの対応で、疑問が残る。

同審判は1日の2軍戦に出場。知人が同日に濃厚接触者として認定されたことを受け、同審判も報告し、2日の試合から自宅待機となった。NPB井原敦事務局長は11日の臨時12球団代表者会議と実行委員会後の会見で1日の試合を行った当該球団への連絡を「本人から知人が濃厚接触と認定された8月1日です」と説明した。だが関係者によると当該球団は少なくとも同審判が濃厚接触者として認定された5日まで連絡を受けた認識はないという。

同審判は3日から微熱、のどの痛みなどを訴え、7日にPCR検査を受け、8日に陽性と判定された。発症2日前から感染力の高い状態にあるとされ、どの時点が完全な発症と断定はできないが、1日の試合は微妙な時期だ。

専門家も競技上、審判と選手間の感染リスクはあると指摘している。この日の対策連絡会議で専門家メンバーの東北医科薬科大学医学部感染症学教室特任教授の賀来満夫氏は一般論として答えた。「審判(球審)で大きな声を(判定で)出される方もいる。大きな声や会話でマイクロ飛まつが飛び、感染するのではと言われている。風向きもあるが審判と捕手は濃厚接触者になり得る。審判にマスクをつけていただいてリスクをコントロールすることは可能です」。球審と捕手は1メートル前後でイニングによっては15分以上の近い空間での滞在もある。NPBはガイドライン通りマスクをつけているといい、リスクは軽減されるが、ゼロリスクではないだろう。

審判の知人に感染者が出たことは当該球団としても早いタイミングで情報共有したいことのはずだ。それによって球団の次なる対応やリスクマネジメントは変わってくる。当該球団が即座に事態を認識していないのなら、コミュニケーション不足と言わざるを得ない。

市中感染が拡大している中で感染者が出ることは決して悪ではない。幸い、同審判とクルーを組んでいた残り2人の審判員も濃厚接触者とは判定されず、現段階は選手も濃厚接触にはあたらないようだ。未知のウイルスという初めてのケースに直面し、入念なガイドラインを作成しても、現実では臨機応変さも求められる。それを「前言撤回」と捉えられることはない。だが報告、連絡、相談は守るべき基本だろう。プロ野球という大船団にみんなが乗っている。3密は避けても、密な連携で困難を乗り越えるが必要がある。【NPB担当=広重竜太郎】

<審判の感染と対応の経緯>

◆8月1日 20代審判は当該試合に出場。同審判の知人が濃厚接触者として認定される。

◆2日 同審判は試合から外れて自宅待機。

◆3日 同審判が微熱、せき、のどの痛み等の症状が出る。

◆5日 知人が陽性判定で同審判は濃厚接触者に。

◆7日 同審判がPCR検査。

◆8日 同審判が陽性と判定される。

◆9日 同審判の感染を発表。