独立リーグ四国ILの最速153キロ右腕に阪神、西武などプロ10球団が注目している。高知の石井大智投手(23)は秋田高専を卒業しており、高専出身では09年ドラフト2位で巨人に入団した近大高専の鬼屋敷正人捕手以来だが、3年終了時でプロ入りしたため卒業した選手では初となる。

独立リーグ3年目の今季は9月に自己最速を2キロ更新するなど、この1年で成長。昨年は0だった調査書も10球団から届くほどになった。「昨年より(奪う)三振の内容が変わってきた。投げたいコースで取れるようになった」。決め球のシンカーの切れ味も鋭い。今季は17試合に登板し6勝7敗。防御率は1・69。リーグ2位の129奪三振を記録している。

高専の4年、5年の間は体力づくりに専念した。「実戦は3年生までのチームが練習試合を組んだ時にその2試合目でさせてもらったりというくらいでしたね。そこで体重も5、6キロ増え、球速は10キロ増の143キロになりました」。

高専を進学先に選んだのは「中学で野球は終わり。工業系の仕事に進みたい」と思ったから。だが、秋田東中のチームメートの左腕・成田翔投手が秋田商から15年3位でロッテ入りしたことで、プロへの思いに火が付いた。「プロ入りしたいと思ったのは翔、それしかないです。中学2年から差は歴然だった」。中学時代にエースを争い、大きく差をつけられたライバルとNPBという最高峰の舞台で再びやりたい。その一心でプロを目指す体をつくり、独立リーグの四国IL・高知へ入団した。

当時コーチで現在監督の元ダイエーなどで活躍した吉田豊彦監督(54)から指導を受け、大きく成長した。「吉田監督からは、1から投球のことを教えてもらいました」。オフにはショウガの収穫のアルバイトをして生計を立ててきた。「ドラフト候補という実感は湧かないが、今年(NPBに)いきたい」。5年間の思いがようやく現実のものになろうとしている。【石橋隆雄】