1月上旬に新型コロナウイルスに感染した阪神岩田稔投手(37)が18日、兵庫・西宮市鳴尾浜の球団施設で自主トレを再開した。6日に感染を公表し、1型糖尿病を抱えていることもあって10日間入院。前日17日までに核酸増幅法による検査で2回続けて陰性判定され、体調も戻ったため練習を再開した。今回の入院生活で、コロナを発症した1型糖尿病患者が重症化しやすい理由をあらためて理解。今後は啓発活動にも力を入れる。

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空は快晴。岩田稔は寒空の下、幸せをかみしめるように1球1球ボールを投げた。新型コロナウイルス発症直後は鼻づまりや味覚、嗅覚障がいがあった。「今はもう治りましたし、元気です」。ウエートトレ、キャッチボールなどで約2時間体を慣らした後、代表取材では元気に声を張った。

6日に感染を公表。1型糖尿病を抱えていることもあり、10日間入院した。感染予防には人一倍気を使っていただけに「なる時はなるんやな、と。割り切って、しゃあないと思いながら…」。前日17日までに核酸増幅法による検査で2回続けて陰性判定され、この日、練習を再開した。

実際に入院して、コロナを発症した1型糖尿病患者が重症化しやすい理由をあらためて把握できた。1型糖尿病は血糖値を下げる働きをするインスリンを作る機能が破壊されるため、岩田稔の場合は1日4回のインスリン注射を続けている。ただ、今回のような入院中は運動ができず、高血糖になりやすい。大阪桐蔭高2年冬から1型糖尿病と闘う左腕でも、血糖コントロールが難しかったという。

「運動ができない分、薬を増やすとか(血糖値が上がる)食事量を減らすとか微調整が必要なんですけど。僕は入院した時、風邪っぽかった。1型糖尿病の人たちはコロナと関係なく、風邪をひいたら血糖値が上がって落ちにくい。なかなか血糖値が下がらんなというのは感じました。そういうこともいろんな人に伝えていけたらと思います」

キャンプインまで2週間。当初は年明けから沖縄自主トレを計画していたが、1月中は関西で練習を続ける。「動けるような状態に持っていかないといけないけど、急にやりすぎてもいけない。1歩ずつやっていこうと思います」。

プロ16年目の大目標は自身初のリーグ優勝、日本一。「全然優勝したことないんで優勝してみたい。そのための必要なピースにならないといけないと思うので、どこで投げてもいいような状態にしていきたい。今年は『どこでも投げる』ことを目標にやっていこうかなと思います」。役割にこだわらず、身を粉にする覚悟でいる。【佐井陽介】

◆岩田稔(いわた・みのる)1983年(昭58)10月31日生まれ、大阪府出身。大阪桐蔭-関大を経て、05年大学・社会人ドラフト希望枠で阪神入団。3年目の08年に初勝利を含む10勝を挙げ、ローテーション投手に成長する。09年WBC日本代表。昨季は5試合の登板に終わり1勝2敗、防御率6・35。通算197試合、60勝82敗、防御率3・39。179センチ、95キロ。左投げ左打ち。

 

◆岩田稔と1型糖尿病 大阪桐蔭高2年冬に発症。同病患者だった元巨人ガリクソンの著書に励まされる。同病が原因で社会人チームの入団内定が取り消され、関大に進学。阪神入団後は08年から1型糖尿病患者との交流会、病院訪問などに尽力している。09年からNPO法人「日本IDDMネットワーク」を通じ、1勝につき10万円を「1型糖尿病研究基金」に寄付。自身と同ネットワークが創設した「岩田稔基金」は同病根治を目的とした研究助成に使われている。

 

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