猫パンチすな! 阪神岡田彰布監督(64)が15日、佐藤輝明内野手(23)に初めて打撃指導を行った。

高知・安芸での秋季キャンプ第4クール初日。打撃時の左手の動きが猫パンチのように弱々しいと指摘。実演指導を交えながら、ボクシングのストレートを繰り出すイメージを助言した。力強い「パンチ」を放つことで、長打力アップ&三振減を狙う。

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岡田監督が拳を握った。安芸のグラウンドで、何度も右ストレートを繰り出した。視線の先には、佐藤輝がいた。午後1時、ティー打撃を行う若き主砲に歩み寄り、約4分間の直接指導。「ボクシングのパンチや。猫パンチじゃない」。そう声を飛ばした。悪い例として、弱々しい猫パンチも実演した。

指揮官は以前から、佐藤輝の打撃フォームの課題として、グリップ位置が高すぎることを挙げている。トップが高いことで「大根切りみたいになってまう」。ボールに対しバットが平行に、線で入ることで捉える確率は高まると分析する。現状は「線で打たなあかんところを点で(打っている)。ハマったらいいけど、なかなかのお」と厳しい評価。そこで、左打者の佐藤輝にとっては「左ストレート」が鍵になるという。

「ボクシングでも一番強いパンチは肩からのストレートやろ。こないしてボクシングするヤツおれへんやろ、猫パンチでな。こんな弱いのんな」

猫が前足の肉球を使ってたたく「猫パンチ」。その打点の高さが今のフォームとダブる。肩の高さから繰り出す左ストレートを意識することで自然とグリップは下がり、レベルスイングに近づく。「空振りの確率はレベルで打った方が少ななんのは、当たり前やもんな。ポイント、ズレてもファウルで逃げれる。ええバッターって空振り少ないやんか」。三振数減、長打力アップにつながると期待する。

侍ジャパン強化試合に出場するため、10月の秋季練習から佐藤輝の打撃については観察するだけだった。キャンプ合流初日の12日も静観。翌13日は直接的な指導は行わず、コーチに託していた。オフを挟み、待ちに待った直接指導のゴングが鳴った。「グリップが高いことは癖ついとんな。打ってる間に知らんうちに上がってる」。悪癖は見逃さない。

佐藤輝は「イメージ1つで変わると思うので試して自分のものにできれば」と前向きだ。フリー打撃では88スイングで11本の柵越え打を放ち、個別練習はロングティーに時間を割いた。リングならぬバッターボックスで大暴れするため、体に「左ストレート」を染みこませた。【中野椋】

◆猫パンチ 猫が、前足の裏についている肉球を使い、飼い主や猫同士などを軽くたたくことをいう。非常に愛らしい姿であるため、SNSの写真や動画でよく愛猫家からよくアップされる。相手に対する攻撃のほか、対象への興味や愛情表現の際にも行っているとみられる。なお俳優のミッキー・ロークが92年6月に東京・両国国技館でプロボクシングの試合を行い、米国人ボクサーのダリル・ミラーに1回KO勝ち。なでるようなパンチにファンから「まるで猫パンチのようだ」と失笑を買った。

 

○…来季プロ14年目の原口がレギュラー争いへアピールを強調した。残留組の鳴尾浜球場で左翼守備に再挑戦中の30歳は「春からアピール合戦じゃないけど、そうなると思う。ファーストと外野でいい練習をして準備していきたいなと思う」。チーム屈指の勝負強さで今季終盤にはクリーンアップも務めたが、貪欲に定位置を狙う。

○…和田2軍監督が来季2年目を迎える森木の年内ノースローを明かした。兵庫・西宮市の鳴尾浜球場で取材に応じ、「(感触を)試すくらいのことはするかもしれないけど、本格的にはしない。痛みが取れてからなので年明けから」と語った。森木は10月のフェニックスリーグで首の張りを訴え、秋季キャンプのメンバーから外れていた。同球場の残留練習でも別メニュー調整している。