41歳にして新球! 広島黒田博樹投手(41)が17日、宮崎・日南キャンプで帰国後初めてブルペンに入った。捕手を座らせて50球。新たに取り組むチェンジアップを突然試し、他球団スコアラーらを驚かせた。昨季から継続するカーブとともに変化球の感触を確認。現役続行を決めた男気(おとこぎ)右腕、向上心は衰えを知らない。
27球目だった。黒田はブルペン捕手に握りを少し見せ、モーションに入った。極めて普通のしぐさから投じたのは、持ち球にないチェンジアップだった。早いテンポで7球連続の試投。抜け球が多く5球がボールとなったが、決まった球はブレーキが利いていた。これが口にしていた進化だった。
「毎年のことですし、少しでも進化していかないといけないと思っています。簡単なボールではないけど、時間をかけてやっていきたい。ちょっとしんどいと思ってますけど」
笑いながらのコメントにも、ポリシーがにじむ。何もしないことは現状維持ではなく、停滞だ。日米通算193勝の右腕はさらなる引き出しを求めてチェンジアップ習得に取り組んでいる。黒田の投球は昨季、球界を驚かせたツーシームが軸。直球、スライダーと横の変化が投球の大半を占める。決め球にもなるスプリットは縦の変化。持っていないものは「距離感を変えるというか緩急。あれば大きな球種」。チェンジアップにいきついた。
数年前から挑戦しては「こだわらずに、どこかで見切りをつける」ことを続けている。海を渡る以前の日本時代にはリリースポイントを確認するための手段として、チェンジアップを投げていたこともある。カーブ同様、何度も挑戦し続ける。理由は「何かやらないと怖い。思っていたボールが投げられないかもしれない。引き出しは多いに越したことはない」。恐怖心が黒田を支える。
飽くなき向上心に驚いたのは他球団の偵察部隊だ。ヤクルト衣川スコアラーは「緩急が入るとやっかいだ。パッと抜かれると、他の球種も効いてくる。要注意だ」とチェック。阪神古里スコアラーは「覚えられると嫌。注意して見ておかないと」。中日井本スコアラーも「打者が立って、どうか。制球も上がるかも」と警戒した。
帰国後初のブルペンで、スライダーとスプリット以外の持ち球を投じた。全50球のうち29球がストライク。当然のようにコーナーにも投げ分けた。「まずは実戦に向けて状態を上げていきたい」。仕上がりは順調。金棒になり得るボールを携え、黒田博樹は20年目のシーズンに向かう。【池本泰尚】
◆黒田の投球スタイル変遷 大リーグ移籍前の広島時代は150キロを超えるフォーシームに、変化球はシュートやカットボールが中心だった。しかし、メジャーではフォーシームが通用せず、ドジャースで「精密機械」のマダックスからツーシームを教わった。握りは日本で投げていたシュートをアレンジし、シュートしながら高速で沈む新球が完成。左打者の内角を突く「フロント・ドア」と呼ばれるツーシームは黒田の代名詞となった。広島復帰直後の昨年は毎年試行錯誤を続けるカーブの向上に取り組んだが、今年は「20年やって、まだカーブをやっていると思われるのも嫌なんで」とチェンジアップに挑戦。これまで何度か試みているが、試合で投げるには至っていない。