侍大谷が世界水準弾 メジャー52勝右腕から最深部

5回裏日本無死、大谷は右中間へソロ本塁打を放つ(撮影・加藤哉)

<日本代表強化試合:日本9-8オランダ>◇12日◇東京ドーム

 侍ジャパンに「二刀流」あり! 来年3月の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)へ向けた、オランダとの強化試合で、大谷翔平選手(22)が代表1号を放った。4点を追う5回無死から、メジャー通算52勝のジャージェンスから、右中間スタンド深くへソロを放った。延長10回のタイブレークでは進塁打を放ち、9-8のサヨナラ勝ちにも貢献した。これで日本はメキシコ戦から通算で2勝1敗とした。

 世界水準のパワーを一振りで証明した。大谷が驚異の一撃を見舞った。4点を追う5回。先頭打者だった。3-2から真ん中低め、直球系に反応した。快音とともに、右中間席上段へ突き刺した。元大リーガーで2ケタ勝利3度の右腕ジャージェンスを砕いた。記念すべき国際大会1号を放った。「打った瞬間(感触は)良かったです」と、会心の仕事をやってのけた。

 即座に対応した。第1打席は空振り三振。手元で動く独特の軌道に、立ち遅れた。残像から思考を巡らせ、スイングを微調整。「ムダな動きを省きたい。言葉で表しづらいけれど、感覚です」。2度目の対戦で仕留めた。

 この1発が号砲となり、坂本、中田、筒香が3連続適時打で続いた。一挙6点の猛攻で一時逆転。前夜のメキシコ戦は4出塁3得点。この日は8回にも逆方向の左越え二塁打を放った。今季22本塁打のスラッガーとしての一面も存分にアピールした。

 緩みのない高い意識で、力勝負を挑める土台を築いてきた。シーズン中は敵地へもスーツケースほどのサイズのバッグを携行。中身は栄養を補助するサプリメントで埋め尽くされている。目覚めた肉体強化とコンディショニングの重要性。ウエートトレの効果を最大限に還元するため適宜、必要な成分を摂取する。追求すれば奥が深い世界。細分化して常備するうちに、周囲の理解を超える種類と量になったという。

 日の丸を背負っても真価を発揮できるのは、いつも自分を律する力。代表合流後も継続しているトレーニングに取り組み、進化へ妥協と余念がない。常にクレバーな状況判断は、タイブレークの延長10回でも生きた。無死一、二塁からの先頭打者。「併殺が最悪だと思っていた。全力で走ればない」と、ボール気味の外角球で追い込まれたが三ゴロで進塁打とした。1死二、三塁でサヨナラ勝ちにつなげた。授かった才能頼みではない、強烈な本塁打と局面での立ち回り。各国のライバルを射抜く侍ジャパンの宝刀になる。【高山通史】

 ▼大谷がプロの国際試合で初本塁打。昨年のプレミア12では1次ラウンド韓国戦で勝利投手になっておりプロが国際大会に参加した99年以降、日本代表で勝利投手と本塁打を記録したプロ選手は初めてとなった。ちなみに花巻東3年の12年に高校日本代表として出場したU18世界選手権では投手で0勝1敗、本塁打なし。