大谷の天井打「世界最速」初速223キロ 東大算出

日本ハム大谷が天井直撃打を放った際の打球初速が導き出された計算式の一部

 日本ハム大谷翔平投手(22)が「世界最速」を記録していたことが11日、明らかになった。11月13日に行われた侍ジャパン強化試合で、東京ドームの天井に消える大飛球を放った。正確な飛距離を計算しようと、東京6大学・東大の浜田一志監督(52)のもとへデータを持ち込んだ。大学の研究レベルの複雑な計算式を当てはめ計算を進めていく中で、打球の初速度が時速223キロだったことが判明した。メジャー屈指の強打者と比較しても群を抜く数値。投げても最速165キロの二刀流に新たな伝説が加わった。

 最高学府の野球人が、大谷の「世界記録」を発見した。東大の浜田監督は、理科2類-大学院工学系研究科卒。「数字は雄弁に語る」を肌で知る。ドームの天井に吸い込まれた打球は、何メートル飛んでいたのか? 疑問を解決したい申し出に賛同した。練習を終え「一誠寮」に戻ると、ユニホーム姿で取りかかった。

 監督は3つの式を用意していた。

<1>大学入試レベル

<2>大学の専攻レベル

<3>論文で学会に発表するレベル

 今回は<2>を採用した。「高校教育にない物理の問題。初速度、重力、空気抵抗を考慮し『速度に比例する空気抵抗を持つ場合』で計算します」と話した。持ち込んだ数字は不完全でも「近似値は出る」という。「打球が天井に消える映像は見ました。皆さんが思っているような…170メートルとかは、出ないのでは。45度の角度で上がっていれば、すさまじい飛距離だったと思いますが」とも加えた。

 打撃時の写真に目を留めた。「飛距離の計算をしていく上で、初速度は重要な要素。計算します」。シャッタースピード1250分の1秒で撮影した。打球は楕円(だえん)のように見える。全長を何度も測り、実際のボールの直径などと照らし合わせ計算。時速223キロという数字が出た。

 静かな一誠寮に「223?」という声が響いた。「おかしい。そんなに速いわけがない」。繰り返しても変わらなかった。「数字に間違いはない。メジャーのトップランクでも時速200キロに届くかどうか。大谷選手のスイングならば」と結論づけた。メジャーで200キロ以上を計測した選手はおらず“最速”が証明された。

 関数電卓を手に約40分間、長い公式にデータを代入し、計算を進めた。「ここはパソコン。人間の手では計算できない」と別室に10分ほどこもった。「飛距離は137メートル、誤差はプラスマイナス15メートル。想定内の数字です」と解答を出した。天井裏に消えた打球は見つかり、野球殿堂博物館に飾られている。伝説の白球に「世界最速で飛んでいった」という勲章が付いた。【宮下敬至、和田美保】