広島ドラ1加藤、侍3人力でねじ伏せ0封デビュー

紅白戦の5回、田中と対戦する加藤(撮影・栗木一考)

 侍トリオ斬りだ! 広島ドラフト1位の加藤拓也投手(22=慶大)が14日、プロ初実戦紅白戦で快投した。紅組3番手で登板。WBC組の田中広輔内野手(27)や菊池涼介内野手(26)を圧倒し、鈴木誠也外野手(22)は全球直球勝負でバットをへし折った。2回無安打無失点デビューを緒方監督も大絶賛だ。

 「バキッ」という衝撃音とともに転がった打球は、遊撃正面に転がった。紅白戦初登板となった加藤が6回、144キロの直球ですでに全開モードの鈴木のバットをへし折った。11日のシート打撃では重鎮のOB安仁屋臨時コーチに「後ろに立っていたので投げにくかったです」と言ってのけたほどのふてぶてしさが、この日のマウンドではサマになっていた。

 「練習から順調にはきている。球の力は自分の武器なので、それは出せているかなと思います。ボール先行になってしまったところは納得していない」。

 登板後の加藤は、いつものように淡々と振り返った。立ち上がりは制球が乱れたが、ブルペンから不安視された制球には一定のまとまりがあった。5回1死から四球を与えるも、同じくWBC組の田中と菊池に力勝負を挑んだ。いずれも高めの真っすぐで力のないフライに切った。鈴木には、3ボールとなりながら3-2とカウントを整えて、最後は内角低めにズドン。7球すべて直球勝負だった。「変化球もありかと思いましたけど、まだ真っすぐでいいかなと思った」とさらりと振り返った。

 「鈴木誠也」の名は、中学時代から都内では有名で加藤も知っていた。幼少期から野球一筋で鍛えられた鈴木と違い、加藤は文武両道。野球を始めたきっかけも、脳にいいからだった。小学生時代に「肥満体形」と指摘されたため、脳への影響を考慮して、まずはサッカーを始めた。だが、体形からポジションはゴールキーパー。運動量が少なく、思った効果が得られなかったことで野球を選んだ。そして今、同じ舞台に立っている。

 段階を追うごとに投球内容を上げる新人右腕は緒方監督からも「打者がみんな球に負けている。球に力があると感じた」と認められた。ふてぶてしさばかりが目立った右腕が、ようやく投球で輝きを放った。【前原淳】