侍藤浪、登板翌日異例のブルペン 妥協なき167球

登板から一夜明け、ブルペン投球を志願した藤浪は「ラスト1球」と告げる(撮影・江口和貴)

 侍魂が止まらない! 侍ジャパン代表の阪神藤浪晋太郎投手(22)がWBC宮崎合宿最終日の26日、予定にはなかったブルペン投球を志願し、WBC期間中では歴代侍投手でも最多の167球を投じた。軽めの投球ではあったが、捕手を座らせてのフォーム修正が過熱。登板翌日でなくても超異例の調整に、藤浪の本気度がにじんだ。中継ぎ起用されるWBC本番に向け、できる限りの準備を進める。

 投げ終わると、「そうじゃない!」とばかりに強く首を振る。ゆっくり、かつ丁寧に、何度もフォームのバランスを確かめる。鬼気迫る表情の藤浪に「妥協」の2文字は一切なかった。

 藤浪 キャンプ中は感覚が良かったんですけど、こっちに来て疲れもあって、気に入らない部分があったので修正しました。

 前日25日の練習試合ソフトバンク戦は1回を無安打1四球で無失点。変化球主体の16球は危なげない内容に見えたが、本人の採点は激辛だった。一夜明け、キャッチボールに納得がいかず、予定にはなかったブルペン入りを決断。WBC仕様に固められた3つのマウンドを他の投手陣に譲り、黙々とフォーム修正を開始した。捕手を座らせ、6、7割の力で投げ続けた球数はなんと167。WBC期間中のブルペンで歴代最多の数字だった。

 藤浪 軽く投げるだけなら肩肘に負担はかからないですしね。これだけ投げ続けることはシーズン中ではないですけど、昨日は1イニングだけで明日は休みだったので。

 キャッチボールの延長線上ともいえる軽めの投球だけに一概に比較はできない。ただ藤浪がブルペンで100球以上を投げることは極めて異例といえる。ウエートトレでの筋力作りを重視しており阪神キャンプでの球数は多くても80球前後。「キャンプでは40、50球でいい感覚が出たんですけどね」。この日はカーブも交えながら、ほぼ直球を投げ続けた。ルーティンを変更してでもフォームのバランスを取り戻しにかかった。

 藤浪 ブルペン、マウンドで1球目から決まる状態で臨みたい。先発がいいとか中継ぎがいいとか、そういうのはない。与えられた仕事をまっとうしたい。

 「飛び入りブルペン」はWBCに懸ける熱意の表れに他ならない。権藤投手コーチも「始めから終わりまで、よく飽きずにやっているよ」と目を細める姿勢が尊い。その一挙手一投足に、WBCに懸ける熱意がほとばしる。【佐井陽介】

 ◆藤浪のキャンプでのブルペン投球 藤浪は今季の宜野座キャンプのブルペンで1日60球から80球を投じていた。初日の1日に70球。宜野座での最多は5日の83球だった。1日で多くの球数を重ねるタイプではなく、過去キャンプでの1日の最多投球数は、昨年2月22日の93球とされている。公式戦では、初回失点から首脳陣が続投を命じた昨年7月8日広島戦(甲子園)での161球(8回)が最多。

 ◆高校時代は… 大阪桐蔭の3年時、春夏連覇を達成した甲子園では9試合に先発して8試合に完投。最多球数は春決勝の八戸学院光星(光星学院)戦で148球だった。春5試合で40回を投げ659球、夏は4試合36回で516球。合計1175球を投げていた。