糸井お待たせ虎デビュー 初実戦で初打席初安打

1回表阪神2死、移籍後初スタメン初打席で中前打を放つ糸井。投手松葉(撮影・宮崎幸一)

<オープン戦:オリックス8-0阪神>◇15日◇京セラドーム大阪

 右膝関節炎から再起を期す阪神糸井嘉男外野手(35)が、鮮烈のタテジマデビューを飾った。古巣オリックス戦に3番DHでFA移籍後初出場。第1打席で中前打を決めた。阪神へのFA移籍選手の初打席初安打は金本や片岡、新井らも打てなかったあいさつ代わりの1本。金本監督は「興味がない」と笑顔で全幅の信頼を強調し、12年ぶりVへ糸井劇場が本格開演した。

 糸井は阪神に来ても、やはり糸井だった。体には18・44メートルの間合いが染み込んでいる。1回2死走者なしで迎えた移籍後の初打席。左腕松葉に対し、ファウルを挟みながらフルカウントになった。7球目だ。外角低めへのスライダーに全身がグッと止まる。巧みなバットさばきで中前へ。節目の初安打だが、これしきで喜ぶはずがない。

 「膝のことがあった。やっとここまで回復した、としかない。久々の打席。真っすぐが速かったです。変化球を拾えたのは良かった」

 本番になれば無数の安打を重ねなければいけないのだ。プレー直後、当然のように淡々と感想を話した。1月の自主トレ中に右膝の違和感を覚えた。「右膝関節炎」で2月の沖縄・宜野座キャンプも別メニュー。まだ試運転に過ぎない。この日は速球に振り遅れ、ファウルになった。3回無死一、二塁も高めスライダーに空振り三振。デビュー戦は2打数1安打だ。オープン戦の残り9試合に同行して開幕モードに仕上げる。

 「まだまだ実戦でやりたいこともある。この調子で徐々に守れたら守りにつけるよう、やっていきます。今日は打席に入れて試合の中に入れて良かった」

 鉄人金本と同じ「王道」を歩み、開幕に向かう。球団関係者は「とらえようによっては、2月に本隊に入らなかったのは良かったかもしれない」と言う。はやる心を抑える金本監督の手綱さばきは配慮だろう。指揮官自身の経験がある。広島からFAで移籍直後の03年2月、キャンプ序盤に右ふくらはぎを負傷。期間中、別メニューで調整した。関係者は「外から『阪神』がどんなチームか、見ることができる。本隊でプレーしていれば、嫌でも注目される」と、金本1年目を思い起こす。過熱しがちな環境から、あえて遠ざけた。

 不動のレギュラーで、開幕3番が濃厚だ。金本監督は「あまり興味がない(笑い)。もう安心しきっているから」と関心すら示さない。ヒットで喜び、騒ぐのは、熱い真剣勝負までとっておこう。【酒井俊作】

<糸井復活の道のり>

 ◆右膝負傷 自主トレで右膝に違和感を覚え、1月24日、大阪市内の病院で右膝関節炎と診断された。

 ◆別メニュー 宜野座キャンプ初日は、球場滞在30分で「行ってきま~す!」とプールトレへ。球場に戻ると、座った状態でトス打撃130振をこなした。

 ◆フリー打撃開始 2月17日に屋外でフリー打撃を開始。140メートル弾など柵越え6本を披露し。「気持ちよかった!」と会心。

 ◆打球直撃もなんの 2月21日、外野をランニング中に、福留の打球が右腕を直撃。ひやりとしたが「収穫や! 硬球は硬くて痛い!」と爆笑させた。

 ◆スライディング解禁 3月7日から中堅で外野ノックを捕球。4日連続となった10日は福留、高山と並んで今季の外野陣を披露。スライディングも解禁し、「100%」宣言が出た。

 ◆甲子園初センター 12日の巨人戦前に初めてシートノックに入り、中堅から三塁へのレーザービームを披露するなどハツラツ。

<阪神にFA移籍した主な野手のオープン戦初出場>

 ◆石嶺和彦(前オリックス)94年2月26日の西武戦(安芸)に「3番左翼」で出場。1回の初打席で、前田勝宏から一塁清原の頭上を越えるヒットを放った。

 ◆片岡篤史(前日本ハム)02年2月23日の西武戦(安芸)に「3番三塁」で出場。1打席目は遊ゴロ、2打席目は遊ゴロ併殺打に倒れた。

 ◆金本知憲(前広島)03年3月16日の巨人戦(甲子園)に「3番DH」で出場。4回の第2打席で高橋尚成から右前打。5回コールドでチーム唯一の安打となった。

 ◆新井貴浩(前広島)08年2月23日のオリックス戦(安芸)に「4番一塁」で出場。4回無死一、二塁の第2打席で、高木康成から左前へ。