松坂切ない快記録、工藤監督「苦渋の決断」開幕2軍

7回表広島2死、先発松坂は新井を二塁ゴロに仕留める(撮影・今浪浩三)

<オープン戦:ソフトバンク1-0広島>◇25日◇ヤフオクドーム

 切ない快記録だ。ソフトバンクが25日広島戦で3投手によるノーヒットノーランを達成した。オープン戦では95年オリックスがダイエー相手に記録して以来、22年ぶり。先陣を切った先発松坂大輔投手(36)は7回を無安打無失点と日本球界復帰後最高の投球内容だったが、この日、首脳陣から開幕ローテーションからの落選を告げられた。ファームで状態を上げながら、1軍昇格を待つ。

 遅すぎた、満点解答だった。松坂は、7回を無安打無失点。4連続を含む6奪三振。文句のつけようのない投球を披露した後、摂津と2人、開幕ローテーションから外れたことを正式に伝えられた。「残念ですけど、オープン戦残り2試合で開幕ローテが決まってないわけがない。それは試合前から分かっていました。先につなげるように投げるだけだったので」と、現実を受け入れ、打ち明けた。

 前回18日西武戦で右足内転筋に張りを訴え、4回途中降板。この時点で事実上、開幕ローテ争いから脱落していた。その翌日から懸命の調整の末にマウンドに立ち、最後のオープン戦で進むべき形が見えた。「ずっとこういう形でやりたいと思っていた。最後の最後で表に出た。うまくボールを動かすところと、動かさないところのメリハリ」。

 右肩に不安がなくなった今季は、球数を費やしても球を動かし、ベース板を幅広く使う新しい投球スタイルを目指した。この日の最速は142キロ。ツーシーム、カットボールと打者の手元で変化する球をメインに打たせた。左打者の外角ボールゾーンからカットボールが食い込むバックドアや、落差の大きいチェンジアップで三振を奪った。

 テンポのよさがノーヒットノーランリレーを呼び込んだ。予定は5回だったが、6回終了時に91球。佐藤投手コーチから「もう1イニング」と送り出された。7回、小窪の三塁線への強いゴロを明石が横っ跳びで好捕。丸の左翼への大きな飛球は中村晃がジャンピングキャッチ。ストライク先行で打たせる投球が野手にもリズムを持たせ、美技連発につながった。

 試合途中で、投手板を踏む位置を一塁側からやや真ん中に変えるなど、まだ完成ではない。「苦渋の決断」とローテ入りを見送った工藤監督でさえ「これからに期待をさせてくれる投球。彼の新しいスタイルができた」と期待はつないだ。今日26日から筑後のファーム施設で調整するが、今季は必ず、松坂の力が必要な時が来るはずだ。【石橋隆雄】

 ▼ソフトバンクは松坂、五十嵐、サファテのリレーでノーヒットノーランを達成。オープン戦のノーヒットノーランは、4投手のリレーで記録した95年3月8日オリックス以来で、0-0の85年ヤクルトを含めて2リーグ制後は9度目。ソフトバンクでは、南海時代の88年3月23日西川がヤクルト戦で記録して以来、29年ぶり。一方、広島がノーヒットノーランを喫したのは86年3月27日近鉄戦、88年4月2日西武戦に次いで3度目となり、中日の2度を抜いて最多となった。