巨人阿部、小林と師弟で日本一へ出陣「前向きに」

開幕前、最後の調整練習で笑顔を見せる巨人阿部(撮影・たえ見朱実)

 新旧正捕手の関係から「4番」と「扇の要」にステップアップし、日本一奪回に挑む。巨人阿部慎之助内野手(38)と小林誠司捕手(27)が中日との開幕戦へ向けて最終調整。1月に初めて合同自主トレを行い、強固な師弟関係で結ばれた。2000安打まで残り83本の阿部。WBCで侍ジャパンの正捕手を攻守に堂々と務めた小林。肩を並べて巨人を王者へ返り咲かせる。

 阿部が力強くバットを振った。小林はバントケージで入念に確認作業を繰り返した。開幕前の最後の調整。グラウンドで2人が言葉を交わすことはない。淡々と互いの使命を果たすために集中力を高めた。17年目のシーズンに挑む阿部は「毎年同じ。いいスタートを切りたい気持ちはみんなある。でも、そればっかりにこだわり過ぎないように」と気持ちの高ぶりを制御した。小林は「とにかく必死に。143試合、がむしゃらにやる」と引き締めた。

 38歳のベテランは前だけを向く。今季から1打席目の登場曲をレゲエ歌手leccaの「前向き」に変更した。「とにかく前向きに野球をやる。もういい年齢なのは分かっているけど、振り返っても仕方ない」。積み重ねてきた1917安打よりも、この先に続く83安打に視線を向けた。開幕後は厳しい戦いが待ち受けることを知るだけに「シーズンが始まれば自分のことで精いっぱいだから」と前置きした上で言った。

 阿部 WBCで誠司が頑張っている姿は、素直にうれしかった。グアムで共同生活しながら練習をした仲間だからね。自分ももっとという気持ちになった。今年はチームとして絶対に負けたくない。

 精悍(せいかん)さが増した小林も成長曲線を緩めることなく突き進む。自らバリカンで6ミリに刈り上げてから開幕戦に向かう。「今思えば(丸刈りは)きっかけになった。節目ですから。それが一番、気持ちも高ぶる。グアムでのことを忘れたくない」。急成長を支えたルーツは阿部との自主トレにあると力説した。その成果はWBCでも如実に表れた。だが、周囲の評価を厳しく断じた。

 小林 貴重な経験だったけど、満足は一切ない。自分が成長したとも思っていない。野球がうまくなりたいと今まで以上に思った。負けた悔しさが大きい。だから絶対に勝ちたい。

 負けたくない阿部と、勝ちたい小林。2人の思いは巨人の日本一へとつながるはずだ。【為田聡史】