広島加藤ノーヒッター逃すも初勝利 塩対応も改善

9回1死まで無安打でプロ初勝利を挙げた広島加藤(撮影・栗木一考)

<広島4-1ヤクルト>◇7日◇マツダスタジアム

 広島ドラフト1位の加藤拓也投手(22=慶大)が快投デビューを飾った。ヤクルト相手に9回1死までノーヒットノーラン。87年近藤真一(中日)以来の初登板で無安打無得点の夢は、バレンティンのヒットで破れたが、見事リーグ新人一番乗りの初勝利をつかんだ。昨年リーグ優勝した広島に強力な新戦力が登場だ。

 鋭い当たりが三遊間を抜けていった。広島加藤の大記録はあと2人のところで途絶えた。無安打投球は9回1死からバレンティンに打たれて消えた。だが「こんなもんだなと。そんなに甘くないなと思いました」。それよりも初登板初先発での初白星を「ホッとしました」と喜んだ。雄平に適時打を浴びて降板も、8回1/3を投げ2安打1失点の上々デビューを飾った。

 150キロを超える直球が見事にコーナーに散り、カウント球、決め球の2種類のフォークを操った。だが長所と短所は表裏一体。ストライクとボールが極端にはっきりし、突如四球を出した。「ヒットはもっと打たれてもいいけど、四球を減らさないと」。2回、3回はともに2死から連続四球。野手に代わる代わる声を掛けられ、捕手の石原にも導かれて踏ん張った。

 あの草むしりを忘れない。転機は慶応高時代の2年。地肩の強さを買われ、捕手から転向したての練習試合。加藤の恩師で同校前監督の上田誠氏が明かす。「荒れに荒れてね。で、先輩の言うことも聞かなかったんですよ。ふてくされてね」。まずは人として成長してほしい。監督は理由を告げず、草むしりを命じた。叱ったのはこの1度だけ。「あれで変わりましたね。考えて、吸収するようになった」と恩師。今季は開幕前に2軍に落ちたが、弱点と向き合いフォームを修正。目線を変え「常に考えて」課題に向き合った。

 開幕前は“塩対応”で話題が先行。正直で真面目な性格がゆえに、社交辞令が苦手だ。インタビュアーの質問にぶっきらぼうに「分かんないっすね」と対応したことが、一部で話題になった。プロとして反省し、あらためる一方で、慶大の同級生からは「お前らしくていい。貫くところは貫け」と助言された。「らしくない」と言われて喜ぶ慶応ボーイ。ジョンソンが咽頭炎で離脱し、急きょ回ってきたチャンスを、ハートで奪い取ってみせた。135球の熱投デビュー。最後はルーキーらしく「ウイニングボールは親に渡します」とはにかんだ。【池本泰尚】

 ▼プロ初登板の加藤が9回1死まで無安打。デビュー戦で先発して8回を無安打に抑えたのは、初登板でノーヒットノーランを達成した87年8月9日近藤(中日)以来、30年ぶり。ドラフト制後は近藤と加藤の2人のみ。過去に新人のノーヒットノーランは36年沢村(巨人)39年中尾(巨人)54年山下(近鉄)65年外木場(広島)87年近藤の5人しかおらず、デビュー戦では近藤だけ。新人の無安打無得点も近藤が最後。なお、広島の新人で初登板初勝利は16年3月30日横山以来12人目。

<加藤拓也(かとう・たくや)アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)12月31日東京都生まれ。22歳。

 ◆サイズ・投打 身長176センチ、体重88キロ、足のサイズ27・5センチ、右投げ右打ち。

 ◆球歴 小2で野球を始め捕手。中学時代は杉並シニアで関東選抜入り。慶応高では捕手として1年からベンチ入りし2年から投手。甲子園出場はなし。

 ◆ドラフト 田中正義で外れ、佐々木千隼で外れの末1位指名。

 ◆ライアン2世 足を高く上げるフォームが特徴。「慶大のライアン」の異名も。

 ◆二刀流 慶大ではリーグ戦で3発。打撃のパワーも自慢。

 ◆東大戦でも 大学1年秋に150キロをマークし、東京6大学野球通算26勝。16年秋の東大戦では無安打無失点投球を達成。武器は最速153キロの直球。

 ◆塩対応 オープン戦インタビューの「ふてぶてしさがいい」との声も。

 ◆秀才 確定申告の参考書を持参して入寮。

 ◆出世部屋 104号室はドジャース前田、野村らが出た。

 ◆座右の銘 「偶然は準備のできていない人を助けない」

 ◆好きな食べ物 すし。