不惑の4番広島新井、衣笠以来30年ぶり2打席連発

3回表広島1死一、三塁、右越えに2打席連続となる3点本塁打を放つ新井。投手内海(撮影・江口和貴)

<巨人5-9広島>◇12日◇東京ドーム

 首位広島が打線爆発で9連勝を飾った。不惑の4番新井貴浩内野手(40)が、40歳以上で球団では衣笠祥雄以来30年ぶりとなる2打席連続アーチ。エルドレッドも2打席連発するなど、11安打9得点で巨人を圧倒した。投げてはドラフト3位床田が7回5失点でプロ初勝利。昨年のセ・リーグ王者が開幕から4カード勝ち越しと早くも独走の勢いだ。

 バットを持ったまま「新井さん」は打球の行方を見つめた。鋭く低い弾道が、そのまま右翼スタンド中段に突き刺さった。同点の3回1死一、三塁で2打席連発となる3号決勝3ラン。「みんながつくってくれたチャンス。オーバースイングに、強引にならないように気をつけた」。2回の第1打席は内角低めのカットボールをすくい上げて左翼スタンドへ運んでいた。剛と柔を兼ね備えた強打者ならではの2発に「4番」らしさを詰め込んだ。

 開幕から9試合で4番を張ったが、前日11日は休養のためスタメンを外れ、22歳の鈴木に4番を譲った。「誠也に限らず、みんなが自分の役割を果たしている」とうなずいていた。自身も代打で出場しての勝利に「休みじゃないでしょう」と笑っていたが、打線の据わりの良さは、代打よりも、やはり「4番・新井さん」だ。

 今オフは、いつになくうれしそうだった。松山や鈴木が4番候補に挙がっていた。松山は「新井さんから奪う」とまで宣言。新井は「自分がいつまでも4番を打っているようでは、カープの今後を考えるとダメ」と真剣に言った。そして「かかって来いという気持ちが半分。もう半分は本当に打ってくれと。新井さんゆっくりしてください、とね」と続けた。誰にも負けぬカープ愛がある。

 一方でカープの4番に強い思い入れがあるのも事実だ。幼少期から赤い帽子をかぶり旧広島市民球場に通って「4番・山本浩二」に声をからした。入団後は若くして4番に座るも結果が伴わず、涙にくれたこともある。簡単には譲らない。今、広島の頼れる4番はやはり「新井さん」だ。前日11日に鈴木を4番に据えた緒方監督も「こういう打撃を見せられたらね。まだまだ誠也は座れんわね」と目を細めた。チームは引き分けを挟んで9連勝。4カード連続の勝ち越しを決めた。どっしり座る40歳の存在感は、半端ではない。【池本泰尚】

 ▼40歳の新井が阪神時代の13年5月7日巨人戦以来となる2打席連続本塁打。広島の40代選手が1試合2本塁打は、87年6月14日中日戦で衣笠(40歳4カ月)が2打席連発して以来、30年ぶり2人目だ。この試合はエルドレッドも2打席連発。広島で1試合に2人が2打席連続本塁打は、92年7月26日大洋戦で西田が1、3回、町田が6、7回に記録して以来、25年ぶり。巨人戦では65年5月11日に興津が3、4、5回に3打席、藤井が3、4回に2打席連続で打って以来球団史上2度目になる。