広島10連勝、いじられ役松山1号「みんなに感謝」

9回表無死、同点ソロ本塁打を放つ松山。投手カミネロ(撮影・江口和貴)

<巨人5-11広島>◇13日◇東京ドーム

 広島が神がかり的な10連勝をマークした。1点を追う9回に代打松山竜平外野手(31)が巨人カミネロからソロを放ち同点。さらに丸佳浩外野手(28)の2点適時打で勝ち越し、石原慶幸捕手(37)の3ランなどで一挙7点を挙げた。2年連続の10連勝は球団史上初。昨年のセ・リーグ王者が早くも独走の勢いだ。

 まだ同点。それでも広島ベンチはお祭り騒ぎだ。1点を追う9回。代打松山は巨人守護神カミネロの初球にバット一閃(いっせん)。快音を残した打球は巨人ファンの悲鳴とともに右翼席に吸い込まれた。10打席無安打と苦しんでいた松山の一振りが、2回から8回まで1安打と眠っていた打線を目覚めさせた。

 「負けていても、うちならひっくり返せるという雰囲気がある。負ける気がしない。その流れに乗っていきたい。本当に強い。ベンチから見ていても、強い」

 広島のいじられ役が流れを変えた。31歳。チームでは年長者も、年下からいじられる。エルドレッドからも日本語で「デブ」「スキッパ」と言われる愛されキャラだ。試合前には同期入団の丸から「打てないデブは、ただのデブだぞ」とちゃかされても笑った。「普段通り。そういうのも助けになった。みんなにすごく、感謝したい」。無安打の選手にも冗談が言える空気が、誰かが打たなくても、誰かが打つ流れを生んでいる。

 コーチ陣からの指示もてきめんだった。前日の試合前練習時、打撃順にあるエルドレッドの名前の横に「こんぱくと」と書き、2打席連続弾につながった。この日は松山の名の横にも「コンパクト」と書かれていた。「焦るな」というメッセージでもあった。ベンチ裏でも意識しながら素振りを繰り返し、打席でも「頭にありました。コンパクトに強い打球を打てました」と実践してみせた。

 松山の1発から打者一巡の猛攻で試合を決めた。みんなが松山の初安打に歓喜し、そして勝利への力に変えた。決勝打の丸は「松山さんが苦しみながら練習しているのを見ていたので、うれしかった」と笑った。それが本音だった。チーム一丸で10連勝。2年連続2桁連勝は球団初の快挙だ。個々の技量に加え、結束力の強い組織力。広島の強さは本物だ。【前原淳】

 ▼広島が4試合連続逆転勝ちで10連勝。広島の2桁連勝は昨年6月に11連勝して以来6度目となり、2年連続で記録したのは球団史上初めてだ。これで広島は00年以来の両リーグ10勝一番乗りとなったが、今年はまだ1敗しただけ。1敗以下で10勝に到達したのは02年阪神以来12度目。広島では日本一になった84年以来、33年ぶり2度目になる。広島のように開幕戦黒星後に2戦目から2桁連勝は、開幕の阪神戦に3-5で敗れた63年巨人が2戦目から13連勝して以来、54年ぶり2度目の珍しいケースとなった。