金子千尋「すごくうれしい」100球切って完投

完封勝利を挙げ伊藤光(左)と抱き合う金子千尋(撮影・栗木一考)

<ソフトバンク0-9オリックス>◇14日◇ヤフオクドーム

 オリックス金子千尋投手(33)が、驚異的な92球完封で2勝目を挙げ、チームの連敗を2で止めた。ソフトバンクに的をしぼらせず、5回終了時まで完全投球。2安打を許したものの、1年ぶり完封を無四球で飾った。通算21度目の完封は現役選手では巨人杉内と並んで最多タイ。ここ2年は7勝と低迷した14年沢村賞右腕が再び輝いた。

 省エネ完封を達成した金子は、マウンドに駆け寄ってきた女房役の伊藤と抱き合った。自己最少完封だった14年9月楽天戦の101球を更新。「27球完投」を理想とする右腕が、イメージ通りの投球を体現した。

 「すごくうれしい。1度は100球を切って完投したかった。去年からボール先行で球数が多くなった。今日は全部ストライクのつもりで投げた。(伊藤)光もいいリードをしてくれた。点を取ってくれてリラックスして投げられた」

 4点を先制した直後の1回は8球。打ち気にはやる相手の逆手を取り、5回までスイスイと48球で終えた。少し間が空いた6回先頭の松田に内野安打を許したが、9回までペースは落ちない。三塁を踏ませない完璧な内容だった。

 福良監督が2年連続開幕投手に指名した理由は「意気込みを買って」だった。FA宣言残留後ここ2年は7勝と不本意。復活にかける強い思いを、指揮官にぶつけた。昨年の球団納会。冷静な右腕が福良監督に「優勝旅行に行きましょう!」と熱く呼びかけた。監督も「びっくりした。あんなことを言うなんて」と驚いたほどだ。

 さらに今年3月の中日とのオープン戦の試合前にも指揮官に持ちかけた。「開幕からチームが連勝するので、その間は断食してくださいね」。開幕3連戦は3連敗で監督の断食は実現しなかったが、チームを勝利に導きたい気持ちを、昨季以上に表に出している。

 昨年の対ソフトバンク初カードは鹿児島、熊本2連戦に金子と西の2枚看板を先発に立て、ともに2桁失点の大敗。そこから下位に沈んだ。迎えた今季の初対決はエースが完封し、打線も9得点と爆発。大勝でお返しした。福良監督は「みんなやり返そうという気持ちがあったと思う」とたくましい選手をたたえた。

 開幕3連敗から6連勝と盛り返し、再び2連敗していた。負ければ5割逆戻り。ズルズル行きそうな状況を止めた金子は「みんなに勝ちたい気持ちがあった」。今年のオリックスは一体感にあふれている。【大池和幸】

 ▼金子が92球で2安打完封勝ち。金子の完封勝ちは杉内(巨人)に並び現役最多の21度目だが、100球未満の完封は自身初。92球以下で完封したのは13年6月13日木佐貫(日本ハム=91球)以来となり、オリックスでは阪急時代の88年9月21日山沖が86球で記録して以来だ。金子は9回無安打で降板した14年5月31日巨人戦以外に、1安打完封が2度、2安打完封が3度と、惜しいところでノーヒットを逃した試合がけっこうある。