巨人菅野が熊本で自己最少3安打完封、地方9戦7勝

巨人対ヤクルト 樹齢1000年と推定されている藤崎台クスノキ群を背に力投する巨人先発の菅野(撮影・横山健太)

<巨人3-0ヤクルト>◇18日◇熊本

 原点回帰で1年ぶり5度目の完封勝利を決めた。巨人菅野智之投手(27)がヤクルト打線を3安打に封じ、今季2勝目を挙げた。開幕後は3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けて習得したチェンジアップを封印。見つめ直した直球とスライダーを軸に凡打の山を築いた。11日広島戦で6回途中で降板した悔しさも今季チーム初の完投勝利で一掃。リーグ一番乗りの初完封勝利で3連勝に導き、被災地・熊本のファンを喜ばせた。

 27個目のアウトも、淡々と奪ってみせた。9回2死一、三塁。菅野は雄平を中飛に打ち取り、頭上で手をたたいた。捕手小林と肩を抱き合い、ようやくほおが緩む。昨年4月13日ヤクルト戦以来の完封勝利を、自身最少の3安打で決めた。「ホッとしてます。素直にうれしいです」と喜んだ。

 シンプルかつ丁寧に攻めた。WBCの前後で自分を見つめ直した成果だった。世界との戦いを見据え投球の幅を広げようと、球速が遅い、落ちる球で緩急をつけるべくチェンジアップをオフに習得。WBC準決勝で敗退後、長いシーズンを戦い抜いて日本一になるには何が必要なのか熟考した。「チェンジアップは投げない。興味はないです。真っすぐとスライダーをきっちり投げられれば抑えられる。基本に返るって感じですね」。導き出した答えが新球を封印しての原点回帰だった。

 この日は両サイドに直球を投げ分け、コースギリギリにスライダーを曲げた。キーマン山田を4打数無安打に封じ、バレンティンも第1打席から2打席連続でスライダーで空振り三振に仕留め、勢いに乗せなかった。「やっぱり真っすぐが基本線」と答えが間違っていなかったと実感できた。

 自分へのリベンジも決めた。11日の広島戦では5回までは96球を要して無失点も6回途中5失点で降板。「悔しいというのを通り越して何とも言えない気持ちになった」。この試合は長くマウンドに君臨するのを命題にした。打たせて取って5回を68球で終え、リーグ一番乗りの完封ペースをつくり出した。「今日の試合に懸ける思いは持っていた。最後までマウンドを守れてうれしい。自分自身にケジメをつけられて良かった」とうなずいた。

 打っても2安打で「投手は投げるだけじゃない。今年は打撃にも注目してください」と笑った。次の登板は25日からの広島3連戦(マツダ)。「強敵だけど、しっかり準備して真っ向から立ち向かいたい」。確かな手応えを得たエースが、次は昨季王者に借りを返す。【浜本卓也】

 ▼菅野が3安打完封勝ち。菅野の完封は通算5度目だが、3安打は15年5月19日阪神戦、16年4月13日ヤクルト戦の4安打を抜いて自身最少被安打。熊本で完封勝ちした投手は96年9月7日横浜戦の吉井(ヤクルト)以来となり、巨人では78年4月13日大洋戦の堀内以来、39年ぶり2人目。これで地方球場の菅野は通算9試合で7勝1敗、防御率1・75と好投している。

 ◆藤崎台県営野球場 熊本市中央区にある野球場。収容人数2万4000人。1960年の熊本国体時に完成。スコアボード横の大きなクスノキが名物。昨年4月の熊本地震で外野席、照明の損壊やバックスクリーンに亀裂が入るなどの被害が出た。ソフトバンク松坂は1000万円の義援金を寄付した。