熊本出身巨人立岡が思い出の地で先制ゲキ走&猛打賞

巨人対ヤクルト 3回裏巨人無死、投安を放つ立岡(撮影・たえ見朱実)

<巨人3-0ヤクルト>◇18日◇熊本

 巨人立岡宗一郎外野手(26)が「頑張ろう熊本!」を地元凱旋(がいせん)で体現した。ヤクルト戦で初回に左前打で出塁すると2死一塁から阿部の中前打でランエンドヒットで一気に本塁に生還。約1年ぶりの猛打賞で勝利に貢献した。昨年4月は熊本地震の影響で巨人戦開催が中止となり、同県では11年ぶりの公式戦だった。苦難を乗り越えて行われた一戦で、熊本出身の誇りを示した。

 夢のようだった。藤崎台球場の外野からの風景は鎮西高時代から何ら変わらない。だが身にまとうは巨人のユニホーム。そして地元の多くの野球ファンから視線を注がれた。9回2死一、三塁。立岡はライナー性の打球を追い、天然記念物の雄大なクスノキをバックにウイニングボールをつかむ。名前を連呼され、ヒーローへとたたえられた。「この球場は高校最後の試合でボロ負けしていた。まさか、ここで3本打てるとは。奇跡に近い」と興奮の余韻を残しながら話した。

 昨年4月、地元熊本が大地震に襲われた。予定されていた巨人戦も中止となった。地震直後の試合で活躍して思いを聞かれても「大丈夫かって? 大丈夫なわけないでしょう」と語気を強めることもあった。故郷を離れ、軽はずみなことも言えない。オフに入り、初めて被災地に足を運んだ。「正直、ショックだった。でもあらためて野球ができる喜びを感じた」。前日17日も被害の大きかった益城町の小学校を訪問。小学校時代に友達がバットやグラブを手に遊びに行くのを見て柔道から野球へと転向し、火、木、土、日の練習日に夜8時まで汗にまみれた思い出を語った。

 「野球は夢を与えられる職業。野球の力を使っていいニュースを届けたい」

 ただ野球の力を感じたのは立岡自身だったかもしれない。「今年、一番緊張した」と試合前は使命感から体が硬くなった。だが目に見えない力に突き動かされる。初回に左前打を放つと2死一塁からスタートを切り、阿部が中前打で呼応。三塁コーチが手を回すのを見て一気に本塁を突いた。3回に投手強襲、5回に右前打で昨年4月22日のDeNA戦以来の猛打賞。試合前まで打率2割と苦悩する2番の姿はなかった。

 数限られる地元凱旋の一戦で輝いた。「これから鹿児島に行って東京に戻る。僕らは東京の方からいい結果を届けたい」。巨人の力に、そして熊本の力に立岡はなる。【広重竜太郎】