阪神鳥谷サヨナラエラー、連続出場金本超えも悔しさ

9回裏中日2死二、三塁、京田の打球を三塁手鳥谷がサヨナラ失策(撮影・前岡正明)

<中日4-3阪神>◇19日◇ナゴヤドーム

 悔しすぎるアニキ超えになった…。阪神鳥谷敬内野手(35)が19日の中日2回戦(ナゴヤドーム)で連続試合出場を1767試合とし、金本監督の記録を超えて歴代単独2位になった。試合では2安打2四球と全打席で出塁。バットでの貢献が光っていたが、9回の三塁守備でゴロをファンブル。サヨナラ負けとなる失策を犯し、喜べない1日になってしまった。

 鳥谷は感情を押し殺すかのように、無表情のままバスに乗り込んだ。同点の9回裏2死二、三塁、1番京田の三遊間へのゴロをはじいた。すぐに一塁送球するも間一髪で間に合わない。サヨナラ失策で3位転落となり、「しっかり捕って投げていればアウトだった」と自らを責めた。1767試合連続出場を達成し、金本監督を抜いてプロ野球歴代単独2位に躍り出た1日。最後は悔しさだけが残った。

 「あの時はもう、試合に出続けるのはやめようと思った」

 今だから胸中を明かせる。連続試合出場中、身を引こうとした瞬間が1度だけある。15年6月21日の甲子園ヤクルト戦で背中に死球を受けた。数日たっても激しい痛みと腫れがまったく引かない。肋骨(ろっこつ)骨折。かつて腰椎や右肋骨を折りながらグラウンドに立ち続けた男も、さすがに限界を悟った。

 「もう絶対に無理だと思った。あと何カ月はもたない、と」。4月には右わき腹に重傷を負っていた。胸を締めつけたのは仲間への申し訳なさだ。「2カ月で2回目。もうこれ以上、チームに迷惑をかけるわけにはいかない」。首脳陣に思いを伝えた。「代わりはいない。出てくれ!」。認めてはもらえなかった。

 あの時、首脳陣が首を縦に振っていれば、連続試合出場は止まっていた。今も昔も、個人記録に固執したことはない。「試合に出る、出ないは自分で決めることじゃない」。必要としてくれるから、試合に出続ける。出続けるために早朝からウエートトレに励み、ストイックな食事制限も続けている。

 記念日は全4打席で出塁。2安打2四球1盗塁で2得点に絡んだが、表情からにじみ出る満足度はゼロに等しい。チームを勝利に導けなかったから。「1日でも長く出たい気持ちはある。いい時も悪い時もある中で、支えてくれた方々がいるので感謝したい」。丁重に言葉を並べた後、表情を引き締め直した。一夜明ければまた、次の試合が来る。記録の余韻に浸っている暇はない、ということだ。【佐井陽介】