楽天戸村が史上初代役2勝、15分前「いくぞ」対応

急きょ先発のマウンドに立ち初勝利を挙げた戸村(撮影・今浪浩三)

<ソフトバンク1-2楽天>◇23日◇ヤフオクドーム

 「トム様」が史上初の代役2勝目を挙げた。楽天戸村健次投手(29)が、先発予定だった岸孝之投手(32)に代わって緊急登板。今季初マウンドとなったが、6回途中無失点と試合をつくり、敵地でのソフトバンク3連戦に勝ち越した。貯金は今季最多タイの9。緊急アクシデントを見事に乗り切り、首位をガッチリキープした。

 試合開始15分前。トレーナー室の扉がいきなり開いた。マッサージを受けていた戸村は、寝かけていた。目の前に立つ与田、森山両投手コーチから「戸村、いくぞ」と言われても、理解するまでに時間を要した。18日に今季初昇格し、ここまで登板機会「0」。出番は突然だった。急いでブルペンに向かい、30球程度で肩を作った。「岸さんに何かあったんだ」。昨年7月3日西武戦以来の1軍マウンドに向かった。

 午後1時開始のゲーム。予告先発は、岸だった。試合前の室内ブルペンで、異変が起きた。投球練習をしていた際に、腰の痛みを感じた。与田投手コーチは「本人は投げられると言っていたが、シーズンも始まったばかり。無理はさせられない」と判断。岸から「ごめん」と言われた戸村は「こういう不測の事態に対応するために1軍に来たと思っている」と覚悟を決めた。

 「相手のスタメンも確認していなかった」と言うほど、ドタバタしていた。それでも「自分に出来ることをやろうと、何も考えずに」とピンチにも動じなかった。初回2死から単打と四球で一、二塁としたが、デスパイネを低めカットボールで投ゴロ。2回2死一、三塁も、中村晃を低めフォークで二ゴロに片付けた。

 昨年8月に右肘クリーニング手術を受け、11試合登板で1勝(5敗)に終わった。強い体を求め、術前より5キロ増の93キロでシーズンをスタートさせた。「今年で30歳。今年こそ自分に期待したい」と己を信じ続け、巡ってきた舞台で大きな仕事を果たした。梨田監督は「全体を通して2点を守り抜いたことは大きい。登板を早く告げるより、急だったから良かったかな」と、救世主に合格点を与えた。【栗田尚樹】

 ▼楽天は岸に代わって先発した今季初登板の戸村が勝利投手。楽天の予告先発変更は15年6月19日ロッテ戦以来5度目で、前回も予告の辛島から代わった戸村が白星を記録。代役先発を2度やったのは99、00年高橋功(オリックス)03、04年星野(ダイエー)に次いで3人目だが、代役先発で2勝したのは戸村が初めてだ。これが戸村は通算54試合目の先発。予告先発では52試合で13勝19敗と負け越しているのに、代役先発では2試合とも白星を挙げている。