巨人菅野が目標にする、近年珍しいエースの記録とは

巨人菅野(左)は片方の目を閉じて手を伸ばして方向を念入りに確認する。後方は大竹寛(撮影・松本俊)

 広島を踏み台に大エースへの階段を上がる。巨人菅野智之投手(27)が、今日25日からの広島3連戦(マツダスタジアム)で先陣を切る。24日、川崎市のジャイアンツ球場で最終調整。前回登板の18日ヤクルト戦で今季初完封と上り調子のエースは、巨人では上原(現カブス)以来となる「シーズン10完投」を目標に掲げた。首位攻防の今3連戦で昨季リーグ王者の強力打線を沈黙させ、自身もチームもさらに勢いを加速させる。

 猛威を振るう赤ヘル軍団との決戦を前に菅野が、胸に秘めていた大きな目標を公言した。通常通りのメニューで準備を整えると「広島を倒さないと優勝はない。今後の戦いにおいても大事な3連戦になる」と強烈な対抗心を燃やした。週のカード初戦を任されるエースの役割も理解している。

 菅野 常に完投という意識は持っている。そこは個人としての目標。今シーズンは、10回ぐらい完投はしたいと思っている。それが広島相手にできれば、チームの相乗効果につながる。

 目の前の一戦の先には、ペナント奪還の大命題がある。巨人では03年の上原(11完投)以来となる2ケタ完投を目標に設定。さらに、難敵相手に完投数を積み上げればペナントレースを優勢に持ち込める。「自分も人間なので。5回で降りることもある。9回まで投げきれないことがほとんど」と話すように、完投だけが目的ではない。あくまでもチームの勝利が最優先だが、その中でエースとして高い目標に立ち向かう。

 開幕から勢いの衰えを知らない広島打線への警戒レベルも高い。前日23日夜、ヤクルト戦の逆転劇もテレビで見て「(ヤクルトの)4-3でいくのかなと思いましたけど、広島はどこからでもホームランがある。やっぱり見ていて怖いなと思いました。そういうのも含めて終盤の集中力ですね」と分析。特にスタンドが真っ赤に染まる敵地では「球場全体が雰囲気をつくるのが上手。のまれないように冷静に投げるのが大事かなと思います」とイメージを膨らませた。

 首脳陣もエースの気概を後押しする。高橋監督は「きっちり相手を崩すような投球をしてほしい。菅野は破壊力がある投手だと思う。本人が持っている力さえ出してくれれば」と期待を寄せた。1・5ゲーム差。広島を踏みつぶし、首位へのし上がる。【為田聡史】

 ◆シーズン10完投 沢村賞の選考基準にもなっているシーズン10完投以上だが、投手の分業制が進んだ近年は珍しく、過去5年では13年金子(オリックス=10)しかマークしていない。投手の打席で代打が出るケースも多いセ・リーグでは、05年の黒田(広島=11)と三浦(横浜=10)が最後。巨人で記録すれば03年上原(11)以来となる。