初の猛打賞!1発深追いせず、凝縮された筒香の考え

3回裏DeNA無死満塁、左越え満塁本塁打を放ったロペス(左)をジャンプで出迎える筒香(右)(撮影・足立雅史)

<DeNA10-9広島>◇4月30日◇横浜

 4番が存在感を示した。DeNAが両軍計29安打の乱打戦を制し、首位広島に2カード連続の勝ち越しを決めた。筒香嘉智外野手(25)は今季初の3安打猛打賞の活躍で打線をけん引。最大7点のリードが終わってみれば1点差の薄氷の勝利も、勝ちは勝ち。勢いに乗ってきた主砲のバットが、チームも波に乗せる。

 冷静に、鋭くバットを振り抜いた。2点リードの3回無死満塁。筒香は内角高めの直球を右前にはじき返した。先頭からの四死球と安打で迎えた序盤の絶好機。「みんながつないでくれたので、何としても(走者を)かえすんだと、強い気持ちで打席に入りました」。4番の責務を果たす一打で流れを一気に引き寄せ、直後のロペスの満塁弾につなげた。

 「勝つために仕事をする」という筒香の考えが凝縮された打席だった。本塁打は、球が投手の指を離れた瞬間に「いける」と感じるという。芯で捉えることだけに集中して打席に立ち、コンマ何秒のわずかな間でスタンドを見据える。初球がそうだった。「最低でも犠牲フライ。球を上げることを考えていた」が、変化球が「いける」ど真ん中へ。フルスイングした大飛球は惜しくも右翼ファウルゾーンへきれたが、その手応えを深追いしなかった。

 本塁打を狙うのは、捉えられると感じた一瞬だけ。だから「カウントが追い込まれてました(0-2)し、後ろにはロペスがいる。強い打球を打つことだけ」と即座に頭を切り替え、コンパクトな打撃で適時打を決めてみせた。

 WBCで対戦した外国人投手の速い投球テンポとの違いから、間合いに苦慮してきたが「だんだん合ってきた感覚はあります」。その言葉通り、初回の先制を導いた右前打と、5回の右前打で今季初の猛打賞をマーク。「感覚はだいぶいいので、このまま続けていきたい」と手応えを口にした。ラミレス監督も「筒香の調子が上がってきて、(3番梶谷、5番ロペスの)クリーンアップも、しっかり機能しているね」と全幅の信頼を寄せる。

 乱打戦を制すことが出来たのも4番がどっしりと座る打線だからこそ。「毎日が新しい1日。いい時も悪い時も変わらずです」と引き締めた筒香。アーチ量産は、もう時間の問題。泰然自若の主砲が、チームを押し上げていく。【佐竹実】